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物と精神

詩・小説・批評・哲学など テーマは「世界と自分のあり方」全体です

詩人の誕生





言葉が私の代わりに

私の胸の内を明かしてくれた

画家にとっては色彩が

音楽家にとっては音楽が

おそらくは『それ』に当たるのだろう

私が話し出す前に

言葉が私の胸の内を語ってくれた

そしてその為に人々は次第に

『言葉』を『私』と思い込むようになったのだった

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詩はラブレターのように

詩を書くという事は

誰か見知らぬ他人に向けて

宛てのないラブレターを書き綴るのに似ている

もし、あなたがとても昔の詩人の詩にときめいたとしたら

それは何千年も前のその詩人が

時を越えてあなたに綴った

一通のラブレターなのだ

詩の橋




詩は何故生まれるのか

それはコミュニケーションの不可能を

自らの中に深く感じているから

人と人は分かり合えない

それらは永久に

それぞれに違う宇宙として孤立している

だからこそ、詩は生まれる

その違う宇宙を繋ぐ

一本の橋として

君達に青空は見えない



君達に青空は見えない

君達の目に映るのはいつも

人々が勝手に引いた国境線だけ

鳥さえもその見えない線の上を

安々と通過していくのに

君達だけはずっと

その線の上にとどまり続ける

・・・君達には何も見えない

君達は他人の感情が見えず

だから、自分の心も見えない

君達に見えるのはただ法律と秩序の線だけ

そしてその他のものは決して見えない

君達がテレビやネットの画面を通して見た世界の

その外側に本物の世界は広がっている

君達はすぐになんでもレッテルを貼りたがるが

それは君達が何も見えていない証拠なのだ

そして、誰かが貼ったレッテルだけを見て

自分が物を見ていると思い込む

もう一度言う 君達には何も見えていない

君達はこれまでも、そしてこれからも永遠に盲目のままだ

そしてこの世界は君達の視界の外で

安らかに自分の呼吸をし続けるだろう

一つの生命体として

病床のドッペルゲンガー

遺伝子の選別と

教育の徹底によって

『天才』は造られるらしい

社会保障がしっかりとしていて

大卒でホワイト企業に入れば

人生安泰なそうな

そして、その上

30までに結婚し、そして四十までにはマイホーム

老後は退職金を上手く運用して

軽井沢に別荘の一つでも買おうか

そして、死の間際には

良識の化身である息子夫婦や娘達や孫達が

駆けつけてくれて 私の名前を

切なそうに呼んでくれる

・・・全く、結構な人生だった

素晴らしい人生だった

私は愛されもしたし愛しもした

社会の秩序を一生涯きっちりと守って

そうして何も派手な馬鹿らしい事はやらかさなかった

・・・私の人生は素晴らしかった

私はずっと幸福だった

・・・なのに、何故だろうか?

こうして病室の個室に一人ぽつんといると

何か言い知れぬ寂しさを覚えるのは

私の生涯はこれまでずっと幸福だったのに

私はふいに自殺したくなるくらい、今、寂しい

その時、私が老齢の極みで

ふいに思った事は絶対に他人には洩らせない事だ

それは一抹の死の前の寂しさ、そして

私の人生そのものが亡骸のような、夢の様な

一つの幻想ではなかったのか、というその不安

そして今、死の前にいる私に残されているのは

私の小指が小さく痙攣してそれが何故か

大層かわいらしく思えるというその事だけだ

私は今、思う

私とは一体何だったのだろう?

私はこんなにも幸福だったのに

私は今とても不幸な気持ちでいる

私とは何だったのだろうか?

私は・・・結局はもう一人の本当の私から見れば(そんなものがいるとすれば)

偽物の私だったのではないのか

私の人生は私が望みもしない事をし

やりたくもない事をやるためにあったのではないか?

私は無機質な病院の中にいて

そんな事をつらつらと考えていた

そして、その時、私に死の足音が訪れると共に

もう一人の本物の私が病室の戸を開けて

『私』に向かってくるのが私にも見えた

その時、私は自分がもうすぐ死ぬ事を確信し

そしてもう一人の私が私に代わって

私の死を・・・その生涯の終末を

全うしてくれるという事を悟った

私の人生は儚く消えた一輪の花

だがその花は造花に過ぎなかった

匂いもせず、どこか嘘くさい造花

・・・結局、それが『私』に過ぎなかったのだ

そして今、もう一人の私が私の耳元で

次のようにそっと囁くのだ

「君はもうおしまいだ

これからは『私』の時代なんだよ

君に意味はなかった

君は存在していなかった

君は皆にとって正しいと思われた事を

誤って掴まされた歪んだ存在だ

だから君の人生はかくも幸福で

そして、こんなにも空虚なのだ

・・・もう一度言おう

君の人生に意味はなかった

・・・ただのひとかけらもね

だから、これからは私の番だ

さよなら、『以前の私』

安らかに眠れ」

そう言うと、もう一人の私は

そっと私に冷たい手を差し伸べてきた

そして、その手は私の首を掴み

そして私の首は次第に絞め上げられていき

・・・やがて私は意識を失った


                     ※

全てが終わった時、

私は闇の中で目を覚ましていた

私は発狂しそうになるのをこらえながら

枕のそばのナースコールを何度も押し続けた

・・・そして、看護婦が私の元にやって来ると

私はやっと安堵する事ができた

・・・だが、今、私は

今さっき見た悪夢を忘れられそうにない

・・・それに夢の中のもう一人の私はきっと

まだ私の夢の中で、次のように

私に問いかけているように思われるのだ

「悪夢だったのは君の人生の方ではなかったのか」・・・と









最後の涙

どんな人間にも感情がある、と

果たして断言できるだろうか?

有名人を射的の的に見立てて

あるいは自分達の全てを誰か他人の責任にして

その人々をひたすらにエアガンで打っている人達

彼らの享楽的な笑顔は果たして

一つの「感情」だろうか?

最も薄情な者に限って

人前で大声で泣くのを得意とするが

その目には周囲の人々の表情を姑息にうかがおうとする

もう一つの眼が隠されている

「感情」とは一体

僕達にどんな事を意味しているだろうか?

今、君が一人で孤独に沈黙している時

たとえ、君の顔が仏頂面だとしても

僕はそこに痛切な一つの表情を見る

君を沈黙させているものが一体何か

僕は実によく知っているから

それでも、いつの日にか君は涙を流すだろう

・・・それは多分、君が死ぬ時

その時、君はしわくちゃの顔に笑顔を浮かべて

そうして最後まで人間達には見せなかった一つの涙を

はじめて僕達に見せてくれるだろう

その時、はじめて君の感情は

この世界の上にぽとりと落ちるのだ

スーパーから帰ってきた時に思った事






スーパーの買い物袋を持って

踏切の前で電車が通りすぎるのを

僕は待っていた

その時、電車が僕の前を横切り、そしてその刹那

明るい車内の中の人達の姿が一瞬だけ見えた

人々は退屈しているようでもあり、また飽満しているようでもあって

その多くがスマートフォンをいじっていた

人々を乗せた電車が去ると

踏切のバーが上がり、並んでいた僕らは前へと進んだ

僕は人々を後にすると

自分の食料を自分の家に運ぶために

帰路を辿った

・・・あの時、通り過ぎていった人々の中にもう一人の僕がいたとしても

今の僕はその僕に気付く事は決してなかっただろう

・・・通り過ぎるのは、僕なのか君なのか

それは誰にも分かりはしない

ただ、全ては時の中で過ぎ去っていくのみだが

私もまた時に対しては過ぎ去るのみなのだが

しかし、『時』は一体、何に対して過ぎ去るのだろうか

おそらく、真理・・・・いや、永遠?

僕はそんな事を考えながら

スーパーで買ってきた肉のパックを

冷凍庫の奥深くへと詰め込んだ

時の永遠を自分の中に

深くまざまざと感じながら

美しい風景




君は何故

眠っているのか

世界は今笑っていて

人々は自分の墓を作るのに忙しい

人はみんな未来の天国を夢見て

そうして『今』を置き去りにすることに専念している

彼らはそうやって自分の人生を浪費し続けている

なのに、君はどうして

未だに眠っているのか

もし、君がそこで目を開ければ

君の目にはこれまで見た事もなかった

美しい風景が輝き始めるだろう

人々に言葉で伝える事のできない

そんな風景が


自作詩の説明




詩は難しいので

僕にはよく分かりませぬ

想いを伝えるために

その為にこそ言葉はあった

だとしたら、こんなにも

想いの存在しない言葉があふれているのは

何故なのだろうか

詩は難しいので

僕にはよく分かりませぬ

ただ、僕は僕の歌を歌う為に

詩という容器を

ちょっとの間、拝借しているだけです

ただ、それだけなのです

僕の詩は

僕の話を聞いてください




あなたが学生なら

僕の話を聞いてください

あなたがサラリーマンなら

僕の話を聞いてください

あなたがニートなら

僕の話を聞いてください

あなたが殺人鬼でも

僕の話を聞いてください



・・・僕の話は長いんです

しかも、結構、わかりにくい

でも、少しは人生に役立つ事

意義のある事が含まれているかもしれない

・・・それはどんな事かと言われれば

それはあなた自身に関する事

私は今、こうしてパソコンの前に座って

キーボードを叩いているだけなのですが

私にはあなたの顔がはっきりと見えます

あなたが八十歳のしわくちゃのおじいさんでも

あなたが十六歳のピチピチの女子高生でも

どちらでも、同じ事なんです 私にとっては

だってあなたはどちらにせよ

『人間』なのでしょう?



だから、あなたは

私の話を聞いてください

私の話は多分、意味不明で

支離滅裂でしどろもどろだ

でも、どうぞ あなたは

私の話を聞いてください

あなたが面白くないと言っても

私はあなたの耳なんか無視して

あなたの魂に向かって話しかけるんで

あなたの言う事なんか無視しちゃいます

人々がどんなに魂を忘れたって

それは人の心の中にいつまでもあるものなので

私は人がどんなに

脳神経やら聴覚や視神経にだまされたって

私はそれでも

あなたの魂に向かって

盛大に話しかけます

まるで荘厳なオーケストラのように



・・・・さあ、話すよ

僕の『生きる』




死んでしまえば

楽になるだろうか?

生きているという事は

ただ辛いだけのものだろうか?

日常は退屈で厭わしく

くだらないものだろうか?

それとも、官能と金銭欲に突き動かされて

それを手に入れればハッピーだろうか?

君はそれらの事を、一体、どう思うだろうか?

そして、僕はこの先、自分の人生を

どう歩めば良いだろうか?

・・・そんな事は僕にはわからないのだが

それでも、僕は今生きている

半分の偶然と半分の必然を

自分の体内で上手く織り交ぜながら


断罪のバット




悪い事をした人には

何をしてもいいのです

いじめをした人にはどんな仕打ちをしても

許されます

だって、それは『正義』なので

差別した人、悪を為した人には

どんな事をしたっていいのです

そう言って、『正義の人』はまた

あの鈍く光る鉄のバットを

思い切り振り下ろしました

でも、その時に僕は見ました

その人のその顔には

実に嬉しそうな笑みが浮かんでいた事を

悪人を断罪するその時の

その人の実に楽しそうな晴れ晴れとした笑顔を

僕はその時にはっきり見ました

でも、あとでその事をその人に尋ねたら

その人は『そんな事は知らない』と言いました

それで僕はその日、一人さみしく帰りました

多分、明日にはそのバットが

僕にも振り下ろされる事でしょう


明日の宿題




「学校という場所はつくづく、不思議な場所に思える。この世界はなんだか、ガラス造りの一つの世界のようだ。そこで僕は眠り、そしてまた考える。皆の言う事、皆の考えている事が、僕は時々わからなくなる。それでも、僕はそこにいる。どうしてだろう?・・・。それは、わからない。僕はやはり、何かを期待しているのだろうか?。・・・天空からの飛行石を持った少女が落ちてくるのを、待ち焦がれている少年のように。
 僕は授業中によく眠る。その眠りは深く、しかし浅い。僕の眠りの質は独特なもののような気がする。とにかく僕はよく夢を見る。そしてその夢は脈絡のないものだ。・・・この前は顔のない鬼が現れた。その前は、声の出ない天使が現れた。そして、そいつらは僕に必死に何かを語りかけていた。・・・なのに、僕は彼らのメッセージを受け取る事ができなかった。・・・僕は目を覚ました。すると、世界史の今岡が僕を見て、「やっと起きたか」とクラス中に聞こえるように言った。クラスの連中はくすくすと笑っていた。
違うな、と僕はその時、思った。僕は僕の中から発せられた大切なメッセージを聞き逃しただけなのだ。それで、その罰として、この地上に降りてきたのだ。そして、それがこの世界では、『目覚め』という形で現れただけなのだ、と。
 僕には友達が一人いる。赤井という奴だ。赤井はとにかくくだらなく、下品な奴だが、僕と気が合うので、僕はよく赤井と一緒にいる。赤井はよく、妙な冗談を言う。「これってまるで×××みたいだな・・・」とか。そのくせ、あいつが童貞なのを僕はよく知っている。
 まあ、そんなことはどうでもいい。大切なのは僕の学校ライフだ。ライフ・・・?。だせえな。・・・ああ、ださいさ。最近は何でもかんでも、嘲笑する人間が周りに増えている気が、僕はしている。彼らは、何かを蔑んでいる時にだけ、自分に生気を感じる奴らだ。教師でもよくいる。化学の塚田とかね。僕はあいつが嫌いだ。あいつは前の学校で生徒殴って、あやうく退職になりかけたらしい。クラスのおしゃべり係の真希から聞いた。
 そんな事はまあ、いいんだけど・・・。僕は漫画なんかもよく読むね。授業中に。教科書の裏に挟んでさ。古典的な方法さ・・・。馬鹿馬鹿しいけどね。前に、クラスでワンピースが流行った事があって、皆夢中で読んでたな。その時は僕もそれを読んで、確かに面白いなあなんて思ったけどね。でもさ、まあ漫画ばっかりでも飽きるじゃないか。ゲームとか?・・・。最近じゃ、そんなのも流行ってないな。今・・・何が流行っているだろ?。女子は、前に比べりゃ黒髪が多くなった、と兄貴が言っていた。「お前達の世代はいいよ。学校で黒髪ロングが見れて」。・・・兄貴はさ、オタクなんだ。だから、黒髪ロングに妙な幻想を抱いているんだ。でもさ、実際、高校なんて行っていると、隣の女子生徒なんか、馬鹿すぎて話にならないぜ。いや、マジでさ。口開けば、ジャニーズの誰それがかっこい、何組の誰それがかっこいい、何組の女子の誰々は正確悪いから、ラインで今度はぶろうぜーーー、なんて。・・・全く、結構なご身分だと、僕も思うよ。・・・それで、こういう奴が、大人になって母親になったら、「やっぱり自分の子供にはきちんとしつけしないと」なんて言う。お前自身をしつけしろ、まず最初に。
 でもね、JKーーー女子高生はいいもんだぜ。そういう面に目をつぶればさあ。だって・・・例えば、夏場に、カッターシャツの下に透けてみえるブラ紐なんて、興奮するじゃないか。・・・いや、ほんとの所。僕は、告白すると、前の子のそのブラ紐が気になってしまった時があってね。あの日は暑かったなあ・・・。その時は僕は自分の勃起を抑えるのに苦労した。全く、授業どころじゃなかったぜ。本当にね。
 でさあ、その女子高生なんてのは、そういう中身に目をつぶればいいもんなんだよ。かわいいしね。・・・これも兄貴が言ってた事だけど、「最近の子はみんな可愛いんなあ、俺の世代なんかひどかったもんね」・・・だってさ。兄貴はさ、もう二十八なんだよ。それで、そうやってグチグチ言うんだよな、あいつは。僕はいつも聞き流しているけどね。それで、兄貴は今、フリーターなんだ。二十八になって、何やってんだって感じだけど、でもまあ、それは奴の人生だからな。・・・勝手にすればいいさ。ニートよりマシだしね。
 でもさ、ここでちょっと兄貴の話を続けるとさ・・・、実際の話、兄貴の問題点は二十八になっても、フリーターでいる事・・・なんてのじゃないんだ。問題はさ、兄貴には統一的方針というものがないってことさ。統一的方針。わかる?。・・って言っても、わからないか。それはね、こういうことさ。・・・兄貴は二年前に、急にバンドやるとかいって、十万もするエレキギターを親に半分出させて買ったんだよな。うちの親は兄貴には甘いからね。(僕とは違って。)でもね、兄貴は僕の予想通り、その半年後にはもうギターには手を出さなくなってたし、バンドの事なんか一言も言わないようになった。十万円するギターは押入れの中でね。・・・よくある事だよ。でさあ、それである日、僕は兄貴に聞いたんだよ。「兄貴、どうしてバンドなんてやろうと思ったの?」って。そしたらうちのぐうたら兄貴はさ、「ああ、それな。アニメでやってたからだよ」だってさ。それで兄貴はまた、自分の読んでいた漫画に目を落とした。・・・全く。兄貴に、統一的な方針がないってのは、そういうことさ。兄貴はいつも、瞬間瞬間の思いつきで生きてるからな。・・・ミーハーなんだよ。要するにね。・・・で、昨日なんて、兄貴は新しいオンラインゲーム買ってきて、「これにどっぷりつかるつもりだ」って僕に自慢してそのパッケージを見せてくるんだよね。だから僕は、「はいはい、そうですか」って流しておいた。兄貴は「これでランキングトップ百に入る」って言ってたけど、なんのランキングだかわからないね。僕には。
 まあ、うちの兄貴はそんなだけれどさ。うちの両親なんかも似たようなもんなんだよね。僕に言わせれば。だって、親なんてのはたいてい、現実主義者を自認している奴に限って、夢を見ているもんなんだ。・・・その話聞いて、ぐえって思ったんだけどさ、うちの親は僕の事を東京大学に行かせるか、それともプロスポーツ選手にするつもりだったんだって。・・・それで、僕をどこのスパルタ式なスポーツ塾だの、学習塾だのに通わせるか、熱心に二人で話していたらしい。ちなみに、兄貴が生まれた時には、そんな事は思いもつかなかったんだって。どうして、僕の時になってそんな事思いついちゃったんだろうね?。・・・全く。・・・でも僕は、そんなのに通わずに済んだ。そういう塾だの何だのの費用が余りにも高いから、うちには無理だという結論に達したらしい。・・・やれやれ、そんな所に通わさせられなくて、本当に良かった僕は思っているよ。そんなとこ行ってたら・・・・・ああ、考えただけでも、ブルっとするよ。
 まあ、そんな事はいいんだけどさ。・・・なんだか、僕は自分のおしゃべりばかりしてるな。・・・君は、僕がこうして喋っているのを聞くと、僕の事を学校でも家でもおしゃべりな奴だと思うんだろう?。・・・とんでもない!。事実は逆さ。僕はね、寡黙なんだよ。いや、本当に。物静かで、家でも学校でも通ってる。だってさ・・・しゃべりたい事なんて、ないしね。エグザイルだのAKBだの何とかレボリューションだの・・・・・僕は知ったこっちゃないんだよ!。知らないんだよ!・・・そんな事は。かといって、クラスの中の優等生連中に混ざりこんで、任天堂の株価とSONYの今期の純利益について話す気も起きない。・・・まあ、僕みたいな劣等生は彼らが何話してるか、全然知らないんだけどさ。
 そんな事はいいさ。君はさ・・・いや、僕の事。僕は僕の事を話そう。いや・・・僕だって、君の事は聞きたいんだよ。君の話をさ。でも、君は語る言葉を持たない。・・・いいんだよ、自分がどんなアーティストが好きかなんて、いや、もうジャニーズの話は聴きたくないし、流行語の口真似もうんざりなんだ。お笑い芸人?・・・よしてくれよ。・・・いやいや、君のどうしようもない彼氏がいかにイケメンかなんて話も聞きたくないんだ。今日、彼女にプロポーズしただって?・・・。何だって?・・・。中学から、十年付き合ってた彼女です、って?。・・・それはおめでとう。でも、今大切なのはその事じゃないんだ。
 君はどうして君を知らないんだ?。・・・なあ、僕だって、心ときめく瞬間というのはあるんだよ。本当にさ。それはどんな時か、言ってみようか?。それはね・・・駅で、一人の少女が電車を待っているとする。周りは皆通勤のサラリーマンや、学生たちの黒い群れさ。そしてその中でその少女はーーー彼女も学生のわけだがーーー、みんなと一緒に、同じような服で、おんなじ車両に乗り込む。そして、ドアが閉まる。・・・だが、その時、その子は何故か、とても悲しそうな顔をするんだな。・・・悲しい事なんか一つもないのに。それはまるで、そこに存在している事が悲しいであるかのような、そんな表情なんだよ。わかるかな?・・・僕の言いたい事。その時、僕はその子にときめく。恋をするわけだ。つまり。 
 馬鹿馬鹿しいって?。・・・笑うなよ。恥ずかしいじゃないか。・・・でも、まあ色々あるさ、人生だものね。なんでも、ソクラテスとかいう昔の賢人は、偉い人に「お前は死刑だ」と言われて、次のように言い返したって言うじゃないか。「それはそうですが、あなた達も自然によって死刑を宣告されているのです」。・・・全く、憎い奴だよね。これじゃあ、死刑になったってしょうがないってもんだ。
 余計な事を言っちゃったな。・・・まあ、いいさ。大体、僕って奴はいつも、こうでたらめな奴なんだ。本当に。世間の、世の中の規律という煮え湯をいつも飲まされて、それでとてもうんざりしちゃったんだね。・・・いや、僕もよくわからないけどさ。ところで、これはここだけの秘密だけど・・・君に一つ、とても大切な事を教えてあげよう。実はこの僕ーーーこの他でもない、一つの実在たる僕は、とあるうだつのあがらない作家志望のつまらない人間によって描かれた一人の人間だって事ーーーその事を僕は今、ここで君に告げてあげよう。こうしてね。・・・これはこれまで公然の秘密だったんだけど、僕はついここで口に出してしまった。・・・言っちゃいけないって、これを書いてる奴には言われたんだけどね。でもさ、我慢できなかったんだよ。でもさ、君はどう思う?。ここまで、こうしてくだらないおしゃべりをしてきた僕という存在が、実は紙の上だけの産物だなんて。・・・そんなの、誰が信じるだろう?。・・・いや、それは僕自身が信じなくちゃならないっていうのか?。・・・全く。
 全くね、今の世の中はおかしいぜ。ほんと言うとさ。みんな技術がどうの「上手い」だの「下手」だの言うけれど、その実、何も見ていちゃいない。これを書いている一人のうだつのあがらない男もさ(彼は僕の友人なんだけど)、言ってたよ。「僕は、文章がうまいなんて言われてもちっとも嬉しくはないよ。だって、皆最初から上から目線だからね。・・・そして、その割には自分は『平凡人だ』、なんて妙に謙虚なんだよ。別に、自分を天才だって勘違いしたっていいじゃないか」。・・・なんか、そんな事をごたごたと愚痴ってたよ。その『作家様』はさ。全く、こいつは嫌な人間だぜ。君も知ってるだろうけど。・・・でも、こいつの話はもうここらでやめよう。僕の方で、うんざりするしね。実を言うと、僕はこの産みの親である、このキーボード叩いている男の事が嫌いなのさ。ほんとの所。
 まあ、でも、雑談はここらでやめよう。・・・でもね、君に一つ言っておきたい事は、僕がたとえ、紙の上の存在にすぎないとしても、そしてくだらない一人の男に捏造された、そんな言葉だけの『人間』だとしても、やっぱり僕は僕だって事だ。これは・・・本当さ。みんなはね、現実というものに余りに重きを置きすぎているんだよ。現実が何だ?。君は、心置きなく話せる友人が一人でもいるか?。あるいは恋人が?・・・。フッ・・・嘘つけよ。君には一人も居ないね。それが、僕にはわかる。何故って?・・・。それは僕もそうだからさ。そして、人間というものが絶対そうであるように造られているからさ。だから、君はさ、また、僕と話したくなったら、ここにおいでよ。僕はここで待ってるから。この紙の上という媒体でね。
 ・・・さて、僕もそろそろ、自分の宿題を終わらせないとね。・・・全く、紙の上の存在にすぎないにもかかわらず、僕には生活もあれば、宿題もあるんだよ。・・・馬鹿馬鹿しい事だけどね。でも、本当さ。・・・それじゃあ、僕は今から、そちらの世界との通信を絶って、そして自分の作業に没頭する。・・・やらなきゃいけない事があるんだよ。こっちでもね。それじゃあ。アディオス。」


                               ※※※


 ・・・僕はその文章を一時間半ほどで書き終えると、ノートパソコンをぱたりと閉じた。そして、ふうっとため息をついた。僕は机の上のコーヒーをずずっとすすった。・・・机の上には、『本物の』明日の宿題が載っている。
 「やらなきゃいけないよな」
 と、僕はひとりでぼそっと呟いた。
 「僕は『こいつ』とは違って、フィクションじゃないわけだし」
 ・・・そして、僕は自分の文章を、ノートパソコンの『倉庫』というフォルダにしまいこむと、本当に自分の宿題に手をつけはじめた。そしてそれをやっている間、僕の頭に絶えず浮かんでいた事は、(ああ、僕が本当にフィクションの中での『僕』だったらな・・・)という事だった。しかし、事実は違った。僕はあくまでも現実の僕であり、そして目の前の宿題は、確かな質量を持った、本物の宿題だった。

私達は

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一つの詩が書かれる為に

ただ、そのためだけにこの世界はあった

病んだ男ーーーパスカルが

よろめいて食卓にもたれかかりながら

この宇宙を思考する時、その時だけ

この宇宙はその存在を

彼の思考によって聖化されていた

私達とは何者でもない

それはもうすでに書かれてしまった

詩の一行のようなものだ

たとえ、その一行が

私達の見知らぬ誰かに

僅かな感動を与えたとしても 

君と僕の世代論

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夜は果てしなく深く

僕達の心を隅々まで浸していった

僕達は静寂の中に生きる事を第一としている

しかし、時には喧騒が必要にもなる

その時、僕達は「都市」に行く



君は何才だろうか?

君は今、何を思っているだろうか?

現実においての満たされぬ思い?

それとも、幸福になるはずの「未来」の事?



・・・君は君の存在を置き去りにしている・・・



僕達が都市へ行く時

満月はビルの頂点にかかる

人々が「時」を数えると

僕達の「時」は静かに後退していく

・・・君は目を開きたまえ

その時、君は

かつて詩人であった僕達が残した遺跡の数々を見出して

そうして懐かしくも寂しい思いに駆られる事だろう

・・・君は思い出したまえ 君が食べたパンは

昔、キリストが変える事を拒んだパンだという事を

そして、今、君はキリストの肖像をビリビリに破って

そうしてようやく、最初の一歩を踏み出す

現在という名の古代においては君こそが

「近代人」の名にふさわしい

君が裸でいればいるほどに、人々は

君が豪奢な衣裳を身にまとっていると勘違いするだろう

・・・君は君を知りたまえ

その時、君は僕に出会う

すると君は知るだろう

時の別名が「僕」だった事

そして君がかつて愛した誰かが

この星で作られた人造人間とは違う

本物の「生物」だった事を・・・



・・・時は巡り

やがて、時間は愚かになっていく

全ての詩人が去った時、やがて、機械星人が現れ

そうしてその時、ようやく本物の詩の

第一行が書かれるだろう

その時、君はあの遺跡の頂点に立って

全てを見て静かに嘲笑っている

さようなら、君の世代は僕達より愚かで だから

僕達より遥かに優れていたんだよ



さようなら


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