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物と精神

詩・小説・批評・哲学など テーマは「世界と自分のあり方」全体です

書物の告白





私とは閉じられた一冊の書物である

誰にも隅の隅まで読まれてしまい

そうして、飽きられて部屋の隅に放り出された

そんな書物である

私は・・・私の中の物語が人々にとって

一体、何の価値もない事をよく知っている

私の物語はありきたりだし、平凡だし、面白みがない

興味をひくような刺激に乏しいし、かといって、人を励ます言葉も一切ない

だから、そんな私の物語に、人はすぐに見向きしなくなった

それで、私は一冊の書物として、部屋の隅でただ一人、くさっている他なくなったのだ・・・

・・・ただ、人は知らない

私が人々に見えないようにしながら

密かにこの物語を書き継いでいる事を

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存在しない私達の為の音楽




存在しない言葉

誰からも何とも思われない言葉

そんな言葉達を

物語ろうではないか?

胸を張って、正々堂々と



誰も読まない物語

誰も感心せず、涙も流さず、激怒すら引き起こさない

そんな物語を作ろうではないか

ただ一人、君の為に



誰にも聞こえない音楽

誰もが素通りする音楽

誰の興味も惹かず、何の感興も起こさず

世界に対して、何一つ足す事も引く事もできないそんな音楽を

魂込めて演奏しようではないか?

この、何の意味もない人生の為に

この、存在しない私達の存在を「無」という世界の中で

もう一つの私達として存在させるために


ペソアのように


ペソアのように



意味のある言葉

価値のある言葉

そんなものはないのだ

世界各地で今日も無数の詩が書かれ

世界中の天才詩人たちがこぞって、自分の詩を確かなものだと考えて

こうして、今日も架空の紙を消費していく

その中にあって、僕の詩などが一体、なんだろうか・・・?

だから、僕には自分には何の価値もなく、何の意味もない事を記述する事が

唯一、僕に残された最後のポエジーなのだ

ポルトガルに生まれた孤独の詩人、ペソアのように

一本の花

一本の花



存在しない自分を見つめる事

日がな、誰でもない自分との対話に終始する事

・・・孤独を極めればそれは世界となり

都市があり交通路もある一つの王国となる

そんな事共を僕は自らの中に感じる

自分のいない町 自分の存在に何の意味もない世界から離れて

僕は僕だけの町で眠ったり起きたりする

・・・世界は結局、いつまでもガラス球の中に閉じ込められていて

それで、なにかを失った代償を求める為に様々な事をわめいているにすぎないのだ

今、僕の孤独には全宇宙がある

人類が失った全てのものよりももっと大きな

一つの王国と精神の実体がある

そして、それが僕の代わりに解き放たれて

異次元を彷徨う一本の花となる


私の中の劇場

私の中の劇場



例えば、私という人間は

この滑稽な劇の中では

脇役の中の脇役・・・背景に過ぎないという

そんな「常識」がある
 
そして、この劇の主役というのは誰だろうか・・・?

例えば、「木村拓哉」であり、「イチロー」であったり、また

現総理大臣であったり、また海外でも活躍する女優などであったりするのだろうか?

・・・そして、この劇を見ているのは誰だろうか?

・・・おそらく、それは私達、背景に過ぎない人物で、私達は

普段、自分達が背景としてしか存在していない事に鬱憤を感じて、そうして

この主役とおぼしき人物達にときどき、トマトなどを投げつけたりして

そうやって溜飲を下げたりしているのだろう・・・

ところで、そういう事に気付いた私は

この「生」という滑稽な舞台から、五流役者としてのポジションを

もう失いたいと考える・・・

すると、全てのざわめきは消え、私は完全な孤独になる

私は知っている・・・光の当たらない所に人は存在できない事を

だから、それから、私は自分の内面に

たった一人、私のための劇場を造る事にしたのだ・・・

『私』の存在不証明としての詩




私は何も書く事はできない

・・・おそらく書くべき真理も事実も教説も

全てこの二千年ほどの間に書かれてしまったのだ

・・・なのに、私は何故、書くのだろう

どんなポエジーも全て書かれてしまったというのに

どうして、私はこうして行を連ねるのだろう?

何の意味もない言葉、無意味の言葉

誰からも何の見返りもない言葉

私という不存在を示す言葉

私が無である事を証明する為の言葉

私が生きた証ではなく、「生きなかった」証である言葉

・・・多分、私はそんな言葉達を

まるで蝶々を追う子供達のように

追っているのだ

そして、その言葉の蝶をつかまえた時

・・・おそらく、私の存在は消える

だが、そこには何がしかの言葉の香気が

不可思議な鱗粉のように

残っているだろう・・・

『私が存在しなかった、その証明』として

言葉の旅路

沈黙する事

言葉のリズムの中に沈潜する事

一人、自己の中に閉じこもる事

言葉を逆向きに、内向きに使う事

外界に向かって「意味」を述べない事

僕の中のもう一人の僕に向かってひたすら書き続ける事

誰からも全く何とも思われなくとも

気にせず書き続ける事

それが僕の詩業

それが僕の旅路

改変者としての詩人




花びらが舞っている時は

どんな歌も鳴り止んでしまう

蝉が鳴り止み、歌姫が沈み込み

そして、世界は音を出すのをやめてしまう・・・

その虚空に私の沈黙が美しく花開けば

世界は再び詩によって、彩られる事になる・・・

私は・・・『詩人』になりたいのだ・・・

誰からも一行も読まれないままに

世界を変えた改変者としての詩人に

言葉

言葉


私に語る言葉はなく

だから、世界は私には不透明だ

どんな、言葉も何がしかの意味を持つので

私は私の言葉を沈黙させたい

そして、それはピアノのキーのように

誰かが叩けば、その人の音色を奏でる

そんな言葉にしたいのだ・・・

今、私が沈黙する時

神がやってきて私の肩を叩く

お前の沈黙は私の耳には響いている、と

そんな事を言うために

今、戸口で揺れたビニール袋は

語ったのだった・・・

詩に似た詩についての詩


何故、これほどまでに多くの詩が存在するのか

・・・ふと思うのだが、この世界の詩の大半は

詩的ではあっても、詩ではない

それは詩への憧憬ではあるが、詩ではない

そして、詩を形づくるには何より

デカルト的な意味での孤立した「私」が必要なのだが

私達は誰も私を持てないために

だから、世界はこんなにも詩によく似た詩で溢れているのだ・・・

しかし、ふと考えれば、それは詩に限った事ではなく

あらゆる事象がそうである

知的ではあっても、知ではないインテリや

才能があるように見せかけているが、実際、才能とはどんなものか知らない人々

天才的であるが、まるで天才の苦悩とは関係のない人物

・・・そして、人生であるようなものの、本当の苦難や

自分だけの歩み乏しい道に欠けた人生という名の人生に似た偽造物

・・・ふと、気付けば、世界はそんなものでできあがっている

だから、今、僕がこうして書いている文章も

もちろん、文学に憧れただけの文学ではないものに違いない

それでも、文学があるとすれば、あるいは『詩』というものが存在するとすれば

・・・それは全く文学らしくもなく、詩らしくもない形で存在しているのだろう

・・・そして、それは花に全く似ていないのに、花の美しさを思わせる

・・・『君』の姿に少しだけ似ているのかもしれない

優しさ



君がもし一人なら

僕の言葉を聞きたまえ

君が好きな人間、嫌いな人間

・・・そんなものを君は

想起したまえ

僕は確約しておくが

五年も立てば、君はそれらの人とは何の関係もない立場になる

どれほど深く愛しあおうと、どれほど強く憎み合おうと

君は五年ともたずに相手とバラバラになる

・・・という事は、相手から見れば

君という存在もまた君にとっての人々のように

交換可能な存在に過ぎない

君がもし一人なら

僕の言葉を聞きたまえ

君は今、誰をも必要としていない

君が一番欲しがっている物は君が全然欲しくともなんともないものだ

君が一番愛しているはずの人間は

全然、君にとって関係のない人物だ

・・・あの仲睦まじい夫婦を見たまえ

あの二人が仲睦まじく見えるのは

互いに上手く誤解しあっているからにすぎない

そして、それは砂上の楼閣にすぎない

君が望んでいる物は君が望んでいない物

そして、君が憎んでいる物は君の

真の友人かもしれない

・・・人間になりたまえ、君は

人々の群れを脱して、君は一人の人間になれ

一人の人間としての意思と意欲を持ち

瞬間瞬間に自分を分解させる事をやめたまえ

『他人』が現れるのはそれから後の事だ

それまで君の前に、『人間』が現れる事は決してない

君が一人の人間にならなければ

君が愛したり憎んだりすべき相手は

絶対に、どこにも現れない

・・・君が人間になった暁には 僕は

見えない花束を君の元に贈ろう

その時、君は はじめて

僕の優しさに気付く事だろう

もう一人のペソア (フェルナンド・ペソアに)

 もう一人のペソア


この孤独な思索者に

私が今、思い考える事とは一体、何か

そんなものには何の意味もないと

ペソアの放つあらゆる言葉達は絶叫している

もし、君が何者かでありたいと望むなら

つまり、君はペソアにはなれない

自分というものを極限まで切り刻み

思考の奥の夢を見る事こそが

彼の願いであったから だから

僕達はこの天才からあらゆる帰結や答えを

望む事はできない

誰も彼もが無名で生きているから

無名で生きている事をこうも極めた人間を

親しく読むという事は

おそらくは良い事かもしれない

生きる事とは何かの針に自分が吊るされていて

そうして、みんなはそこから落下すると「終わりだ」と思い込んでいるのだが

実際は、そうではない

そこから落ちると、存外に奈落というものが

居心地いいものだと私達が気付く時が

いずれはやってくるだろう

その時、君の眼にペソアのあの彫刻のような顔が覗いても

君はその顔の奥にもうひとつの燃え盛る愛がある事を確かめるために

まだ、しばし歩まなくてはならない

僕は今、ペソアの書物を手に取って

自分の体内をかき回すかのように自分を検索する

もし、世界が一つの夢なら、私の内部というもう一つの夢は

「それ」に対抗できるもう一つの巨大な伽藍の夢だと

私が知っているから

・・・だから、私はペソアに別れを告げ

自分の無名性を貫く

その時、私は裏の世界に現れる

もう一人のペソアに出会う事だろう・・・

月光への誓い  ーー君へーー





僕は君が誰か知っている

君は飲み会の席では

愛想笑いを振りまきつつ

一応の手拍子やちょっとしたそれなりの話をして

「盛り下がらない」程度の芸当はできるが

しかし、それも君にとっては

義務感から行う一つのサービスにすぎない



僕は君が誰か知っている

君は彼氏に手をつながれている時、あるいはセックスの時

少しの安らぎと興奮を覚えるのかもしれないが

しかし、君は彼氏の脳みそが

セックスと金と打算以外に何にも詰まっていない事をよく知っている

・・・なのに、君はその彼氏を信用しようとして

彼氏が甘えたりねだったりしたら

ついつい、それを許してしまう



僕は君が誰か知っている

君は会社でも控えめで

そして仕事がよくできるから

君の上司や部下はついつい、君に頼りすぎてしまう

だけど、君はそんな周囲に

抗議の声を上げる事はできない

君は人々に「嫌われてしまう」のが

何より、嫌だから



僕は君が誰か知っている

部屋の中に一人ぼっちで座って

膝を抱え込んで考え込んでいる君の姿を

君はこれまで来た道、そしてこれから歩む道を思案して

不安に苛まれ、途方に暮れる

これまで君がしてきた事は

人々の要求に合わせて

拙いダンスを踊っていたという事だけ

そして、君が君の本当に歌いたい歌を歌った事は

一度としてなかった

そして、君はその事に対して密かに

抗議と不安の声を自らの中に育成させてきたのに

それを心からの声として発した事は

やはり、一度もなかった

君はこれまで人々にいいように使われてきただけた

だから、君は疲れている

君はとても疲れている

僕は君に言う

「いつまで、そこで眠っているんだ」と

君はもうそろそろ気づいてもいいはずだ

君がこれまで尊重していた人が

君が嫌われたくないと思っていた人々が

どれほど愚劣な連中かという事を

そして、君の中に光り輝く

魂があるという事を

君はもう三十を過ぎている

もう、君はその事に気づかなくてはならない

歩き出すのに遅すぎるという事はないが

君の体がまだステップを覚えている間に

君は立ち上がり、歩き出さなくてはならない

その時、君は厳しい表情をしている事だろう

それを、人がなんと言おうと

君は決して、振り返ってはならない

これは君の人生であり、他人の人生ではない

君はこれまでの人生をずっと

他人に捧げてきた

それはもう十分だ

君はこれから

君自身の唯一の人生を

君そのものに捧げなければならない

その為に、さあ、まず君は

風呂へ入って体を洗い

そして窓からのぞく月に向かって

これから自分がどんな人生を真に歩むか、その道筋を

その月光に固く誓うのだ

「今日からは違う自分を歩む」

・・・と、その事を

一瞬の劇場



何かが掌に残れば

それは温かく光るだろう

君が蛍でもないにしても

君にも光る一瞬があるのかもしれない

この世界で生きている以上

僕達は火を燃やすための燃料以上の存在ではないわけだが

それでも、時には劇場の真ん中で

スポットライト浴びて堂々と演技する一瞬が

あるのかもしれない

そして、その時、人はどんな表情をするのか

僕はよく知っている

この一瞬に耐える為、時間というものをくぐり抜け

自分を作り上げてきた人間はおそらく

見事な跳躍を見せるだろうが

自分の存在しない亡霊は

光に当たって、溶けてしまうだろう

今、存在しない僕の幻体は

一体、どこのスポットライトを浴びているのだろうか?

僕は例え、僕が消滅したとしても

消滅しない一瞬を

自分の中の劇場で

造り上げようとしているのだ

寝る前の読書


 今日は「カラマーゾフの兄弟」の続きを読んでから寝る事にしよう。・・・もう、僕はは正直飽きてしまったんだ。・・・友人からの誘いにも気乗りしないし・・・。今更、誰かのおちゃらけたバンドのライブに行ったって、どうなるものか?
 物事の裏まで見えてくると、人生というのは幸せではなくなってくる。・・・例えば、飲食店というのはどれも衛生管理なんててんでやってやしないし、それに、アイドルだの声優だの何だのと、その裏がいかに汚れているか・・・馬鹿馬鹿しい。このわけのわからない世界で、自分勝手に夢を見る事を、自分自身の知性に妨げられてしまうと、もう楽しさは失われ、幸福は消える。友人の、恋人の、自分に対する陰口を想像して見給え。・・・しかも、それは実際に起こっているのだ。
 ・・・だから僕は「カラマーゾフ」を読んで寝る事にする。・・・手元に残るのはこれ一冊。陰鬱さ壮大さと神聖さと、それより何より真実と・・・。そんなものが人生にいるのかどうか、それは誰にも分からないが、人生というものから見捨てられた男には、そんなものが今、必要なのだ。
 さて、読書灯をつけよう。

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