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物と精神

詩・小説・批評・哲学など テーマは「世界と自分のあり方」全体です

    希望

あてどない希望について語ろうか?
俺達にはもうとっくに失われた
その希望について

もう亡くした夢について語ろうか?
俺が少年時代に夢見た
そして今、その残骸だけを有しているという

全てを失った郷愁について語ろうか?
全てが昔、存在したという
一つの幻想に基づいた

それとも俺の希望について語ろうか?
人々の持っている幻想とは違う
それ故、確かに光り輝いている

そうした希望について俺は語ろうか?
人々に拒否される事を
心の中で覚悟しつつも


  本物の表情

俺は絶望している人間が好きだ
何故って絶望している人間は一人もいないから

俺は暗い表情の人間が好きだ
何故ってみんな装った明るさを湛えているから

俺は今にも自殺しそうな人間が好きだ
何故って偽りの生の素晴らしさを喧伝するやつばかりだから

俺は君の今にも死にそうな表情が好きだ
何故って俺は君の事が好きだから

君の偽りでない君の本物の表情が好きだから


   救い

僕が消滅するという希望が
まだこの世に残っている

世界は終わるかもしれないという遙かな可能性が
まだ輝いている

全ては分解され、消滅し、跡形もなくなるという救いが
まだ僕達の手に残されている

そして君の手の中にも


  詩人の手

詩人は詩を書く時、
何だか眠たそうな表情をします
彼(彼女)はきっと見えないものを見て
その手はあの世をさまよっているのです
きっと


  詩人の言葉

詩人の言葉は
普通の人の話す言葉とは違う
別段、高尚という訳でもないがとりわけ卑俗でもない
それは例えば恋人の裸体にそっと伸ばす手や
太陽を求めて延びる蔦によく似ている
何かを求めるから その先に
言葉がやってくるのだ


  天使の存在感

考えに考え抜かれた策略が
愚か者の一言で崩壊する時
そんな時に人の上に天使は舞い降りる
きっと、天使は笑って僕達にこう言っているのだ
「私達の真似をしてはならない あなた達はあなた達自身でいなさい
その時、初めて私の存在を感じ取れるでしょう」と


   悪夢

朝、君は透明な線をなぞり
この世の外に出る
そこには丘が一つあって
そのてっぺんには樹が一本立っている
そしてその樹の下には若年の頃の君が眠り
"君"が近づくとうっすらと眼を開けて
「おはよう」と微笑む
その時、君はつと夢から覚めて
ああ、二度ともうあんな悪夢は見たくない、と呟く
彼女は君を殺そうとしていたのだ
現実のーーー大人になった君を呪って


   詩人のキス

「詩人はキスをする時
目をつぶるの?」
という質問が子供から来ました
詩人はキスをする時
目を開けています
何故なら詩人は
見えない物を見るのが仕事
だからせめてキスの時だけは
相手の事を見つめようとするのです


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  砂場の夢

金持ちは驕る
自分で金を得たのではない者に限って
貧乏人は嫉妬する
自分で金を得る努力をしなかった者に限って
そうやって世界は回り
いつまでも大人の戦争ごっこは終わらない
そんな時も子供は砂場に架空の夢を描き
大人の子供っぷりをあざ笑っている

  未来へ

俺はお前達とは
全然違う人間だ
何故ならお前達は「人間」であり
俺は「人間」ではないから
お前達は巧妙に慈愛に見せかけたり
露骨に差別したりするが それらはとどのつまり
お前達だけが正当なる人間で
俺のような敗残者は人間ではないという認識を示している
それならそれでいいが、巧妙に見せかけた嘘で
「悪」を包むのだけはよしてもらいたいものだ
俺はお前達を押しのけ
一人未来に進むから


   0点

結果主義者よ さようなら
俺は人生を愛する
例えこの人生が何の甲斐もないのだとしても
俺は人生を愛する
例え、俺の人生のスコアボードに0しか並んだいないのだとして
誰がどう見てもそれだけの人生だったとしても
俺はその人生を愛する
何故なら、それは俺の人生だから
君の人生じゃないから
君の人生は0点だ 俺から見れば
科学的基準 客観的基準 人間が作りだしたせせこましい基準ではかれば百点なのかもしれないが
それは君の作った衣装じゃなく、他人が縫った衣装だ
だから君の人生は0点
そして俺の人生は百点さ 俺から見れば
例え「君達」から見てどうしようもない0点だったとしてもね


  違う朝

朝、人々が動き出す
一杯のコーヒーが汲まれ
それは死人のような俺の口に運ばれる
昔はトーストをかじって登校したものだった
今、俺はフランスパンをかじってから出勤する
過去と現在の違いはただそれだけ
後は何一つ変わってやしない



   死体をくれ

死体をくれ
俺に一体の死体を
何故なら、生きている奴はどこにもいないから
生きている奴がいないから死体もまたあるはずもなく
この秋の驟雨の中で鳴っている音は一体、誰のためのものなのか?
そんな問いを発する俺もまた生者でも死者でもない
俺に死体をくれ
一体の渇いた死体を
今にも土に還りそうな
真に生きる事の意味を知っていた
そうした一体の死体をおくれ

    咎

全ての物事が管理統制されて行く
「ルールは守らなければならない」という美名の元に
あらゆる犯罪が開拓されてゆく
「自由」の旗印の元に
人間という奴は
犯罪を犯す事が好きだ どっちにしても
正義の名をした犯罪そして
犯罪だという自覚のある犯罪 どっちにしても
人間というやつは罪を犯す事が好きだ
そしてその咎を負う事は好きじゃないらしい


   感動を止めさせることはできない

感動を止めさせる事はできない
いかに美学者や歴史学者が口酸っぱく
その作品について力説したところで
感動を止めさせる事はできない
為政者がピストルを突きつけて
「それを止めろ」と言ったところで
感動を止めさせる事はできない
万人が涙を流し
「素晴らしい」と言った所で
それがフェイクである限り
俺は笑いもせず泣きもしない
感動を止めさせる事はできない
ふいに訪れた昔の音楽や
恋人の切ない表情や風に吹かれた一輪の花なんかに
ついつい感情移入してしまう事を
お前達は決して止めさせる事はできない
感動を止めさせる事はできない
俺の心は石でできていない
俺の心は心臓でできているのだから

   言葉の槍

言葉はあるが
人間はいない
世界はあるが
生き物はいない
僕らは電磁アスファルトの上を
滑るように進む
自分自身を一つの言葉として
いるはずのない他者を呪いつつ


  無用な言葉

人と会いたい
「人」はいない
この孤独の都市の中でも
電磁アスファルトーーー電流達が交流する世界のどこにも
人は一人もいない
こんなにも溢れているのに
無用な言葉達が

 
    人間

さようなら 言葉の群れ
今、人間達がどんなに正しかろうとも 僕は
一匹の子犬の渇きを選ぶ
そして君の渇きを
君が飢えて舌を出すその様を

僕を殺してみたまえ・・・血が流れ出るだろう
君自身を刺してみたまえ 君の身体からは言葉が流れ出て
大河となってこの世を覆うだろう・・・
君は人間ではないのだ
「俺は(私は)人間だ!」・・・と叫んだあの日から

人間なら
飢えてみたまえ
渇いてみたまえ
一度でいいから本物の飢えを体験してみまえ
即ち、君の世界観は変わるだろう
君自身を殺した一匹の虎の
渇いた舌のように・・・君も飢えるだろう
一匹の獣となって、君は滑らかに夏草の上を這い
その時、君は初めてこの世の星座を目撃する

昔から君は一匹の獣だった
ただ一時、人間という名の獣より一段劣った
神に似せられて作られた蛆虫に身を落としただけの

   一本のスミレ

今、世界は一つの夜
言葉はただの剃刀
今、世界は一つの真昼
驟雨すらも我々を怖れる
今、世界は一つの戦争状態
嬰児の髪の毛すら武器になる
今、世界は俺の庭
俺の足跡すら一つの音楽となる
今、世界は人々の遊び場
血で血を洗う泥んこ遊びの真っ最中
今、世界は神々の庭
人間に無限大を与えてせせら笑っている
今、世界は・・・一本のスミレが咲くための場所
この世界に逆らって咲くための

W・H・オーデンに

   

『役人が机を叩いて叫んだ
 「お前達はパスポートがなければ死んでるも同然だ」
 だけど俺達はまだ生きている そう、生きているんだ』

これが僕達、詩人というものだ
土くれ一つ持たないけど
血の一滴だけは所有している

    微風

一編の音楽が世界を奏でている時
僕は一体、何を歌おうか?
世界が一つの交響曲である夜
僕は一体、何を叫ぼうか?
人々が一つの怨歌である今
僕は一体、何を怒鳴ろうか?

 ・・・・・・わからない
 ・・・・・・わからない

それでも僕はここにいて
その頬に穏やかに微風は吹き付けるのだ

   自慰

眼の中に光があり
俺の魂は手の中にある
人々の行方は知らず
風は常に凪いでいる
天も嘆きを忘れた午後
俺の魂は空に奪われた
いかれちまったバイクの暴走も何のその
この広い領海を死せる哨戒機が這っていようと 俺は
風を読む事をためらわない
この世は常に広い領海たる事をやめて
己の枠に閉じこもろうとする殿様だから
俺は・・・そう、いかれちまった身体を抱えて
お前の骸を抱く為に生まれてきたのだ
人々の賛歌と叫声が聞こえてくる中 俺は
一人、自分自身の自慰を信じている

    扼殺

生ある者を全て扼殺せよ
それらは全て幻影であり幸福の余韻に過ぎない
彼らはあたかも生きているかのように見せかける架空の生き物であり
一匹ののろまな亀の実在感にすら及ばないのだ

生ある者を全て扼殺せよ
我々は死者だから 死者として生きているから
枯れた一枚の草ほどに我々は
死を謳歌する事すら許されていない

生ある者を全て扼殺せよ
全ての原因菌は幸福という幻想の中にあり
生きているというまがい物の実在感の中にある
架空の中に生を創造せよ 我らは
そこでのみ生きる事ができるのだから

    声

死者の嘆きが聞こえる
誰にも殺される事のなかった
死者の嘆きが俺の魂の耳に聞こえる
言葉を失って
生と死を剥奪された
現代人の死体の呻きが
俺の耳に今はっきりと聞こえる


   地獄

誰からも愛される事なく
誰をも愛する事もない
よって生まれる事も死ぬ事もなく
社会の歯車として永久に運動している
君達、歯車が時として見せる
あのニヤリとした表情が堪らない
まるで自分に言い訳かするか
他人に自らが良き奴隷である事を誇るかのような
あのニヤリとした表情が堪らない
俺は君達を殺し
自分自身の為の地獄を創造する




  ある論文の主題

心を越えて
空は有る。
魂ほどの大きさの
宇宙の容量についての論文。
光。
夜。
今、君が見せた裸体についてーーー。
言葉を失うことについて。
誰もが知っていることを「知らない」というおじさんの凄惨な死について。
誰ものありふれている死について。
誰もが忘れている死について。
自分の死について。
自分について。
君のことについて。


   君との朝食

くだらないよ
全くくだらないよ
ーーーもちろん、この朝を除いて
君と一緒に
カフェで朝食を取りたいよ
中南米の株価や東北地方のちょっと変わった風習なんかについて
どうでもいいお話をしながら
人々が真剣になっている話題を
さも楽しそうに茶化しながら


  つまらない

つまらぬ人間も
死ぬ
という事はつまらぬ人間も
土に還る
と、つまりつまらぬ人間も
つまらなくなくなるわけだ


   嫌いな奴

正直、死んでくれと思う奴が一杯いる
でもそいつらがもし実際死んだら
僕は少しは悲しむだろうさ
僕にも少しは心があるのでね
だが、もし僕が死んだら彼らは
おざなりの涙を流すにとどまるだろう

   ヒバリ

この朝に人は
テストの事や資格の事や
昨日やり損なったセックスの事なんかを思う
この朝にヒバリは
まるで駆けていくように飛んでいく
まるで人間なんかより遙かに
生を謳歌しているかのように

    終われ

世界よ 終われ
全部くだらないよ
神様、もう何もかも見てきたろう?
さっさと杖を一振りして
この世界を終わらせてくれ
あの子の笑みだけは
僕の心に留めたまま


   風

風が強い
この風は
スコットランドの北東部からはるばる海を越えて
流れてきた風らしい
今朝の新聞がそう言ってた
それはもちろん嘘だけど・・・だけど
実際に新聞に書いてある中身よりは楽しいだろう?
僕の事はそこに一行も載っていないけれど

  海へ

海よ
お前は長年の間、そうして
多数の人を飲み込んできた
そして今夜、その懺悔のように
夕陽に染まって赤い血を流す
だが、海よ
お前は私達を助けてもくれた
ありがとう そして さよなら
今、俺はお前に還る
この世とおさらばするのだ

   雨よ

雨よ 降れ
俺達の世界を濡らせ
おんぼろ小屋にも大豪邸にも
等しく雨を叩きつけてやれ
豪邸の中にも貧乏長屋の中にも
等しく人の醜さと卑しさが満ち溢れているから
雨よ 降れ
そうして俺達の世界をびしょびしょにしてくれ
そうして雨が上がった後
一羽の小鳥を天に舞い立たせてやれ

  
  先輩の念願

この平和の倦怠に飽いた人が
今に殺戮を始めるから見てろ
・・・そう言って先輩は
私達より先に旅立ちました
今日は先輩の命日だから
お赤飯を炊いて皆で召し上がります
だって、先輩の念願がようやく叶った日なのですから


   シャボン玉

地獄のような毎日さ
だって、僕には存在がないのだから
みんな、バーチャルスイッチでポンと消えてしまう存在なのに
あんなにごちゃごちゃ言ってみっともないぜ
みんなみんな淡く消えていく
そう、夏の日のシャボン玉のように
そうしてそれは美しく散って
夏の日に太陽光線を受けて輝く
・・・人生なんてそんなもんさ
みんなごちゃごちゃ言って情けないぜ
僕は今こうして死ぬけど
おそらく誰よりも美しいシャボン玉となるだろうさ


  愛する者達

健常な肉体達よ さようなら
そして傷ついた魂達よ やってこい
例え不死の概念を獲得しようと 俺は
この世界の死する者達を愛する
例え、人間共が神になろうと 俺は
神になり損ねた人間達を愛する
俺は そういった者達を愛する
そして人々に疎まれる













   真実

画面の奥には全てがあり
画面のこちら側には何もない
あちら側こそ真実であり
こちら側こそフェイクであるという
こうして現実は虚構となり
虚構は現実となる
僕は真実を探すために
人間界とおさらばした

   言葉

言葉にならない言葉
言葉にできなかった言葉
そんな言葉だけが
真実の言葉となる
他の言葉は嘘っぱちだ
人間が喋っている言葉なんかは


   あの時のネロへ

雨に濡れ
ネロは行く
自らの死骸を引きずって
彼は昔に死んだ
その時に彼には
彼の死を詠んだ一人の詩人がいた
今はもういない
ネロは行く
自身の死そのものを
廃棄場に捨てに行くために

  振る舞い

魂の中で笑え
言葉を失っても なお
君自身の中で笑え
世界を敵に回しても
例え一人でいる時も
君は神と一緒にいるように振る舞え
そうしたら世界が笑いかけてくれるから

  急ぐな!

どこにも行く当てもないのに
どうして僕はこんなに急いでいるのか?
僕の魂が急ぎだし
足はもつれながらそれを追いかけていく
どうして僕はそんなに急ぐのか?
・・・急いだって良いとこにいけやしない
天国には行くのはまだまだ先だというのに

  一つの声

夜の果てを
伝わり
私の声は
電波のように響く
タワーマンション253Fに
幽閉されたかのような
あの子の元へ

私は受け取った
彼の声を
地下53Fに住む
奴隷のような暮らしを強いられている
彼の声を
それはもう一方で
まるで奴隷のような暮らしをしている
私の耳に届いた

声は届く どこでも
魂の空という空を渡って



  生の日の午後

死者が羨ましい
彼らはもう
何も発言しなくていいから
だから誰からも干渉される怖れもなく
安らかに眠れる
生者は
いつも怯えるばかりで
脳がない
いつか、僕も土の中に身を横たえて
安らかに眠れる日が来るだろうか?
そんな事を思う
生の日の午後

  詩の花

生活は詩を生むが
詩は生活を生まない
よって詩人は詩に身を食われて
死ぬこととなる
自らの死骸の上に
詩という美しい花を咲かせたまま

  お祈り

小さなものに目を向けて
大きなものには目を向けず
小さな悪は犯罪だが
大きな悪は正義だと言う
法律に則って犯せば正義
法律に反して犯せば悪
・・・さて、僕は眠ろうか
明日が来ないようにお祈りでもしながら

  始まりと終わり

魂を空に放て
心よりずっと遙か遠く
世界が終わったって俺の知ったこっちゃない
全ては初めから終わっていたのだ
今さら、わあわあ喚く必要もない
俺は終わったものから始めて
始まりをこの世に残して死ぬつもりだ

http://p.booklog.jp/book/50611

詩集にまとめした。写真もあります。

   いろいろ六

  新鮮味

音楽が魂に響き
俺は目を閉じた
世界はこんなにも美しい
・・・おそらく、それを超越しようとする者には
今、夕方の空を一羽のカラスが駆けていく
それはどんな絵画にも増して
新鮮味があった

  四月の朝は

何もすることのない四月の朝
何も考える必要のない四月の朝
僕の四月の朝は
こんな朝ばかり
五月になっても何も変わらない・・・
それは知っている
僕は生きていないのだから

  死ぬ時

ニュースになれば
生も死も尊ばれる
どんな生も死も
それが現実である限り誰も見向きもしない
サリン事件の時、人は
倒れている人を横目に素通りしたそうだ
それはそうだろう 僕だってそうするからだ
だが、僕はーーー
家に帰ってニュースを見て、憤ったりはしない
僕も死ぬ時は
絶対に独りぼっちだからだ

  魂の所在

朝、
魂はどこにあるのか?
コーヒーを入れ、それを飲み
憂鬱そうに空を見上げる僕の中には
それは・・・ない
今しがた明けの空を通っていったあの鳥達の中に
僕の魂も隠されているのだろうか?

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