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物と精神

詩・小説・批評・哲学など テーマは「世界と自分のあり方」全体です

   クロード・ロラン


クロード・ロランの美しい風景に
私は十ニ分に魅せられていた
それはこの世には有り得ない風景
その間、私は現実を忘れていた
俺達はそんな空想的な芸術など見ないと
現実主義者達が言う
彼らは現実に精一杯自分達の空想を持込み
現実を汚くしていることを知らないのだ
私はクロード・ロランの描いた風景の前に佇み
しばしこの世を忘れていた

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   夢から覚めた午後


天使のスカートにひだひだがついて
俺は卒倒する
夜の陰に怒りは湧いて
人々の中に散る
神々はいつもの沈黙を止め
もつれた舌で喋り出し・・・
俺はいつしか俺へと還る
まるで夢から覚めた午後のように

   人間

死の後に生があり
そうして自然界は回っている
死を怖れる人間が
一代で全てを喰い尽くし、滅亡させようと
驚くには当たらない
性(セックス)もまた同じ事
一時の快楽の為に永遠を失い
そうして無限の時を悔悟で過ごす

   美しい花


詩人が真実を語ると
人は「黙れ」と言う
詩人が美について語ると
「あいつは現実を知らない。空想的だ」と人は言う
君よ 真実を語ってやれ
人々の中に咲くたった一輪の花になれ
例えこの世界が壊れようとも
君の歌は宇宙の底まで届くさ
全てが終わった後も、赤い染み一つ
美しい花が咲き誇っている

美の幻想  人のにらめっこ


    美の幻想

美しいものの幻想を
俺にも見せてくれ
幻想はやがて真実となるから
それはこの世には有り得ない
女体の像や仏画だったりするが
少なくとも現実よりは良いものだ
少なくとも・・・
美しいものの幻想を
俺にも見せてくれ
俺には目の光だけでは足りない
この目で実物が見たいのだ
この世を一片の仮象とするような
そうした美の実在が欲しいのだ


      人のにらめっこ

人は名付ける
自然は名付けない
海や空を人が何と名付け
どうやって区切ろうとも
鳥は空を飛び 魚は海を泳ぐ
彼らは人間が作った制限を
安々と越えて飛び、泳いで行く
人間だけが自分の思慮の虜になって
いつも互いににらめっこしている





   心の血


頬を伝う涙を
俺はもう笑いはしない
人の心の奥底に
本物の涙が流れていると知ったあの日から
人は
悲しまずに泣く事のできる唯一の動物だ
だが同時に
泣く事をせず悲しむことのできる唯一の動物でもある
あの日、映像の中で 君の
見えない涙を発見した時
俺の心は真っ二つに折れ
この大地に赤い血を流したのだ・・・


   国境の虹


国境の上には雨が降り
それは人が作った小さな仕切りを
嘲笑うかのように降り続け そして
その上空には美しい虹が架かっていた
それを隣国同士の国境警備兵達が
思わず見とれて数分の間、我を忘れていた
その間、彼らの頭の中には
国境も何もなく美しい虹が架かっているだけだった

     一本の道


人々の織り成す世界の上を
僕の足は孤独に歩む
一度は人々に見捨てられた身
もう怖いものは何もない
人々の織り成す世界の上を
僕の足は孤独に歩む
僕が歩いたその跡は
やがて一本の道となる

   努力


人間にとって最悪の事態とは
死ぬことに他ならない
ところでその最悪の事態が
この先に来る事は誰にも決まった事だ
という事は今は最悪の事態に向かう途中
いや、今この瞬間こそが最悪の事態と言って良いだろう
若やいで華やいで見える若者達も
その実、その背には死を背負って生きている
で、あるならば事態は簡単だ
我々は死を越えれば良い
その時、先人達が一体何のためにあんなにまで努力してきたのかが
ようやく我々の目にも見え始めるだろう


    君の素顔


大きな声で叫んでいると
段々、自分がしぼんで遂には消えてしまう
一人、沈黙していると
再び僕が現れて蘇った
世界は大いなる言語に包まれて
それ故、人はどこにもいない
・・・僕は君の素顔が見たい
もし、君に素顔があるのなら

    妖精の休息


詩人が詩を書く
画家が絵を描く
それで事は終わる・・・だが
批評家が批評を付け
やたら贅沢な額に入れられ
競売にかけられたりするようになるとそれはもう手が付けられない
誰も詩を詩として
絵を絵だとして見てくれなくなる
それでも心のある人だけが
全てを見抜いてそれを資としてくれる
その時だけ詩は元の詩に還り
絵もまた元の姿に戻る
まるで沖の孤島で妖精が
ほっと一息休むように



    見えない花


花の中を歩いていると
僕自身花になったような気がする
それ自身、素晴らしく咲き誇っていて
僕自身もそれらのように
ごく自然に歩みを飛ばす
車の騒音や人いきれの中でも 僕は
見えない花と一緒に都市の中を歩いた


   丘を登る


輪の上で天使は踊り
光は風に変わり
お前は俺となった・・・
大樹の下では一人の少女が
素朴に読書をたしなんでいるが
その上空には一つ目玉の怪物
更にその上には神様がそれらを見ていて
嘆息を繰り返しつつ、頬杖突いている
俺は
君に会うためにサンドイッチを持って丘を登った

    本物の金


この世界は本物と偽物が入り混じり
同じように通用する場所
金メッキも金も同じ価値
だから人はよく
金メッキを真似て人と自分を騙す
そうして「金」となる人はじっと沈黙して
あの世を待つしか能がないのか?
この世界は本物と偽物が入り混じり
同じように通用する場所・・・だが
やがて金メッキは剥がれ人々は欺かれ
こうして「本物」だけが残ることになるだろう

   起こしてくれ


熊の冬眠のように
僕は夢の中でぐうぐうと眠りたい
この世の全てを失って
打算と利害を放棄して
愛したいだの愛されたいだの
何かが足りない、何かが大きすぎる
そんな言葉を捨て去って
僕は永遠の夢の中で
ぐうぐうと眠りたい
熊の冬眠のように
いつかまた春が来たら
太陽よ、僕の眼をそっと起こしてくれ

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