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物と精神

詩・小説・批評・哲学など テーマは「世界と自分のあり方」全体です

 純粋芸術

 「実際の所はただ一人の人間の叫びが聞こえるばかりなのである。」(小林秀雄 『レオ・シェストフの「悲劇の哲学」』)

 シェストフの叫びの裏側には二十世紀の暗黒が渦巻いていた。小林もまたその暗黒に葬られた。というより小林や太宰や中原が生存していた領域が葬られたのだ。
 バタイユやシェストフなどは人間の死そのものだ。彼らは縊れて死ぬ者の最後の叫びなのだ。そして小林達はこの死を無傷で通れなかった。彼らは皆そこで死んでしまった。柳田や折口は半死半生で抜け出てきた。今、僕らは死後の世界にいる。フーコーやドゥルーズなどは死体そのものだ。彼らは着飾った美しい死体に過ぎない。
 小林や中原が見なかったものを僕らは見ざるを得ない。もう純粋な芸術などというものはありえない。それらは存在することができないのだ。

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 夢

 夜の電灯の下で

 懐かしい音楽が巷に流れた

 僕達は手に手をとって

 「恋人」達の夢を見ていた

 
 恋人達は各々の花畑を行き

 僕達は幸せそのものだった

 「幸せそのもの」に疲れきった人々は

 一つ二つと脱落して行く

 そんな光景が更に花を美しくし

 僕達は笑いをあげた


 さて、現実に戻ると洗濯物が溜まり

 食器で溢れ返った台所がごちゃごちゃとうるさい

 僕らはそれを「カス」共に任せて

 またしても夢を見るのだった・・・

 僕と君が

 僕の雨が降って 君の雨が降っても

 空は尚晴れている

 僕の心が晴れても 君の心が晴れても

 空には尚雨が降っている

 
 僕達は空だ・・・


 空である僕達が晴れたり降ったりしている間も

 空は笑いを止めない

 
 空は人間だ・・・


 人間は空であり

 空は人間だ

 
 だから尚雨は降り止まず
 
 だから尚陽は照り止まない

 その中を僕と君が手をつないで行く

 その中を僕と君が手をつないで行く
 

 門

 僕は門を叩いている
 
 その頭に夕闇が降りかかる

 空を見上げると星が輝いている

 誰かがそれを消した


 僕は門を叩いている

 神風が嵐のようにやって来る

 左手は既に濡れている

 ・・・門はひとりでに壊れた


 僕は門を叩いている

 門の中にあった門を

 微かな光と共に僅かに開き始めた

 次なる門を

 発見

 僕は雨の中に独りで立っていた

 街々の遠くの灯がバカみたいに光っていた

 僕は独りで本を読んでいた

 夜の街灯の中で 独りで

 
 僕は空を思い出して上を見上げた

 見えない水滴が僕の顔に突き刺さる

 その奥に星は見えない けれども

 何か光るものが発見された


 月だ

 僕の嫌いな人の「死」

 墓を立てたんならとっとと入って下さい

 邪魔だから 僕らの


 お前の生涯は何ものでもなかった

 ただの安クズ鉄と一緒だ

 お前は生きていていいことがあったか?

 教えてくれ お前は生きていて何かいいことがあったのか?

 
 教えてくれ 女を抱く以外に 子を作る以外に

 何かいいことがあったのか?


 お前は今これから死ぬ

 ゆっくりと苦痛に満ちた顔をして

 俺にはそれが嬉しい 凄く

 お前の苦痛に歪んだ顔が

 俺の好きな唯一の顔だ

 他の顔は全部大っ嫌いだ!

 
 お前は死んで墓に入り

 やがてそこに朝陽が射す

 お前は目覚めるが誰もいない

 お前は死んでいるのだ

 

風が吹く

 窓の外に独りで立ってる

 君はどこかの蝶のよう

 月の裏側に宿る虫のように

 君はゆっくりと背を伸ばし

 振り向いて僕を見てくれた

 僕は笑っていたが 心は穏やかではなく

 君のことばかり考えていた

 
 ・・・風が吹く

 

ソファーの凹み

 僕はあなたの中で死にたい

 あなたの中が僕の墓地です

 僕の遺体は灰となって

 あなたの中に取り憑くでしょう

 嫌なら僕を捨てて下さい

 捨ててもすぐにやって来るんですが

 
 あなたは日々生活を送ってゆくでしょう

 灰となった僕を内に残して

 そして時々、ソファーの凹みをさするでしょう

 あれが僕なのではないのかと

狂人の恋

 僕は君のことが好きだ

 なのにそれは誰にも伝わりやしない 何故なら皆が

 「彼氏」とか「彼女」とか言うからだ

 だから何もわからない


 僕には何も分からない

 君が向こうの繁みの奥でこっちを見て微笑んでいる

 ただそれだけなんだ

 僕が「理解」できることの全てと言ったら


 君が僕の事を見て笑ってくれたら

 それだけで僕は百人力だ

 こっちを向いて笑ってみてよ 可愛い蝶よ

 僕を殺しておくれ!

 
 僕は君の事が好きだ

 あの日夕陽か何かを見ていた君が最高に好きだ

 と言っても解らないだろうな・・・

 だから、僕は・・・

 
 僕は君のことが好きなんです

 君に会いたいし 話したい

 だから僕は口をつぐんでしまう

 僕は「バカ」なんです


 僕は自分も解らないのに

 あなたのことを好きなったバカです

 君が目の前にいてくれると嬉しい

 それだけでもう死にそうなくらいです・・・


 僕は何にも知らずにあなたのことを好きになりました

 君は何にも知らずに僕の目の前に立ってる

 僕の恋心も知らずに・・・それでもいい

 あなたが生きていてくれれば それで・・・


 僕にはもう何も解りません

 おそらく気が狂ってしまったのでしょう

 あなたの名前も覚えていません

 あなたの顔しか浮かびません

 他には全く何も覚えていません

 何も・・・

 
 僕はあなたの事が好きなんです
 
 他の誰よりも・・・「誰」って何ですか?

 僕には解りません 僕はただあなたが好きで

 それが僕の「命」なんです・・・

 僕は・・・


 僕は校庭で初めてあなたを見かけて以来

 あなたのことが好きになりました

 他の事はもう全部解りません
 
 あなたの顔さえも・・・


 あなたの顔も忘れて

 僕は「狂人」になりました

 今は楽しい日々です こうして

 毎日「あなた」と出会えているわけですから・・・

 口内炎

 窓の外の大方の風が

 僕達と何の関係も無い道路を

 僕達と何の関係も無く走っている

 僕のざるそばは今台所で悲鳴を上げている

 伸び切ったあいつを食べる僕の口内は

 真っ赤に爛れている

朝の印象

 僕はよく知らないのです

 あなたの顔を

 あなたの顔をまだよく見た事がないのです

 素面で 間近で

 僕は生きている、唐突にこのような事が起こるのです

 まだ朝ぼらけ

 僕は寝ている、なのに起きている

 
 君は眠っている

 風と共に起こして上げよう、ほら

 君の半眼が開きかける

 僕が眠りと一緒に起こして上げよう、ほら

 歌を歌い歯を磨いて朝が始まるよ

 
 選ばれた蝶のように

 歩地

 馬鹿なんです、の僕が

 君を好きになったよ

 天使の足音が君の肩に乗り

 僕は高らかに歌を歌い上げたのさ

 「裸足で走ってみな」って

 風に許された歩地を除いて

 夕方の恋

 傘の上に雨が降り続けている

 君はその下でぼうっとしている

 僕は雨の下で降り続けている君を見ている

 君は僕の下で降り続けている何かを見る

 雨の中の夕闇が騒ぎ出すと

 灯はそれへの抵抗を始める

 雨の下の傘の君は

 傘を持たない僕を追いつめる

 僕は傘の下の君と一緒になりたいと願う

 それは叶えられる

 亡霊達

 君はボールを投げようとして

 肩を脱臼した小さな鼠だ

 皆が彼岸で笑っているよ

 君が脱臼した様を笑いながら

 
 君はおもむろにマシンガンを取り出してそいつらを殺すが

 君はやっぱりボールを投げられない

 肩が脱臼しているからね

 
 ほら、あそこで亡霊達が君の真似をしているよ

君へ

      1

 頼むから死んでくれ

 どんな死に方でもいいから

 頼むから死んでくれ

 僕は僕を殺す

 さっさと君も死んでくれ

 君の全てがウザイんだ

 君が生きてる事がウザイんだ

 だから早く死んでくれ

 君が生きてることに堪えられない

 むしゃくしゃして刺し殺したい

 だから早く死んでくれ
  
 僕が君を殺す前に

 僕が君を殺す前に・・・

      2
 
 君に生きてる価値なんて全然ない

 それは君も解ってるんだろう?

 だったら早く死んでくれ

 僕のために 皆のために

 皆がそれを願ってるんだ

 僕らみんながそれを願ってるんだ

 だから早く死ね・・・

    3

 君はそれでも死にたくないと言う

 生きてる価値が全然ない人間だと知っていながら

 自分で自分を殺す勇気を持てない

 なら、生きろよ

 つまらないから、生きろよ

    4

 やっぱ、死ね!

    5

 僕はこうして生きている

 死に損ないの君と一緒に

 死に損ないの僕と一緒に

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