FC2ブログ

物と精神

詩・小説・批評・哲学など テーマは「世界と自分のあり方」全体です

新作短編

http://ncode.syosetu.com/n6661ee/

スポンサーサイト



最期のモーツァルト

http://ncode.syosetu.com/n0221dl/
http://p.booklog.jp/book/108626/read

モーツァルトの最期に関する小説です。多少、史実を拾っていますが、基本的には創作です。この所は死について考えています。

「横浜駅西口で」という小説

http://p.booklog.jp/book/93529/read


以前書いていた小説をアップしました。五十枚くらいあるので、ダウンロードした方が読みやすいかと思います。ちょっとした出会いの話です。

以前書いた小説をアップしました

https://i.crunchers.jp/data/work/6672

http://ncode.syosetu.com/n6110cj/4/

やや長いです

小説をアップしました

失敗作なのでお勧めはできませんがURLを載せておきます。このブログには載せませんので。


https://i.crunchers.jp/data/work/6426

http://ncode.syosetu.com/n1852ci/

明日の宿題




「学校という場所はつくづく、不思議な場所に思える。この世界はなんだか、ガラス造りの一つの世界のようだ。そこで僕は眠り、そしてまた考える。皆の言う事、皆の考えている事が、僕は時々わからなくなる。それでも、僕はそこにいる。どうしてだろう?・・・。それは、わからない。僕はやはり、何かを期待しているのだろうか?。・・・天空からの飛行石を持った少女が落ちてくるのを、待ち焦がれている少年のように。
 僕は授業中によく眠る。その眠りは深く、しかし浅い。僕の眠りの質は独特なもののような気がする。とにかく僕はよく夢を見る。そしてその夢は脈絡のないものだ。・・・この前は顔のない鬼が現れた。その前は、声の出ない天使が現れた。そして、そいつらは僕に必死に何かを語りかけていた。・・・なのに、僕は彼らのメッセージを受け取る事ができなかった。・・・僕は目を覚ました。すると、世界史の今岡が僕を見て、「やっと起きたか」とクラス中に聞こえるように言った。クラスの連中はくすくすと笑っていた。
違うな、と僕はその時、思った。僕は僕の中から発せられた大切なメッセージを聞き逃しただけなのだ。それで、その罰として、この地上に降りてきたのだ。そして、それがこの世界では、『目覚め』という形で現れただけなのだ、と。
 僕には友達が一人いる。赤井という奴だ。赤井はとにかくくだらなく、下品な奴だが、僕と気が合うので、僕はよく赤井と一緒にいる。赤井はよく、妙な冗談を言う。「これってまるで×××みたいだな・・・」とか。そのくせ、あいつが童貞なのを僕はよく知っている。
 まあ、そんなことはどうでもいい。大切なのは僕の学校ライフだ。ライフ・・・?。だせえな。・・・ああ、ださいさ。最近は何でもかんでも、嘲笑する人間が周りに増えている気が、僕はしている。彼らは、何かを蔑んでいる時にだけ、自分に生気を感じる奴らだ。教師でもよくいる。化学の塚田とかね。僕はあいつが嫌いだ。あいつは前の学校で生徒殴って、あやうく退職になりかけたらしい。クラスのおしゃべり係の真希から聞いた。
 そんな事はまあ、いいんだけど・・・。僕は漫画なんかもよく読むね。授業中に。教科書の裏に挟んでさ。古典的な方法さ・・・。馬鹿馬鹿しいけどね。前に、クラスでワンピースが流行った事があって、皆夢中で読んでたな。その時は僕もそれを読んで、確かに面白いなあなんて思ったけどね。でもさ、まあ漫画ばっかりでも飽きるじゃないか。ゲームとか?・・・。最近じゃ、そんなのも流行ってないな。今・・・何が流行っているだろ?。女子は、前に比べりゃ黒髪が多くなった、と兄貴が言っていた。「お前達の世代はいいよ。学校で黒髪ロングが見れて」。・・・兄貴はさ、オタクなんだ。だから、黒髪ロングに妙な幻想を抱いているんだ。でもさ、実際、高校なんて行っていると、隣の女子生徒なんか、馬鹿すぎて話にならないぜ。いや、マジでさ。口開けば、ジャニーズの誰それがかっこい、何組の誰それがかっこいい、何組の女子の誰々は正確悪いから、ラインで今度はぶろうぜーーー、なんて。・・・全く、結構なご身分だと、僕も思うよ。・・・それで、こういう奴が、大人になって母親になったら、「やっぱり自分の子供にはきちんとしつけしないと」なんて言う。お前自身をしつけしろ、まず最初に。
 でもね、JKーーー女子高生はいいもんだぜ。そういう面に目をつぶればさあ。だって・・・例えば、夏場に、カッターシャツの下に透けてみえるブラ紐なんて、興奮するじゃないか。・・・いや、ほんとの所。僕は、告白すると、前の子のそのブラ紐が気になってしまった時があってね。あの日は暑かったなあ・・・。その時は僕は自分の勃起を抑えるのに苦労した。全く、授業どころじゃなかったぜ。本当にね。
 でさあ、その女子高生なんてのは、そういう中身に目をつぶればいいもんなんだよ。かわいいしね。・・・これも兄貴が言ってた事だけど、「最近の子はみんな可愛いんなあ、俺の世代なんかひどかったもんね」・・・だってさ。兄貴はさ、もう二十八なんだよ。それで、そうやってグチグチ言うんだよな、あいつは。僕はいつも聞き流しているけどね。それで、兄貴は今、フリーターなんだ。二十八になって、何やってんだって感じだけど、でもまあ、それは奴の人生だからな。・・・勝手にすればいいさ。ニートよりマシだしね。
 でもさ、ここでちょっと兄貴の話を続けるとさ・・・、実際の話、兄貴の問題点は二十八になっても、フリーターでいる事・・・なんてのじゃないんだ。問題はさ、兄貴には統一的方針というものがないってことさ。統一的方針。わかる?。・・って言っても、わからないか。それはね、こういうことさ。・・・兄貴は二年前に、急にバンドやるとかいって、十万もするエレキギターを親に半分出させて買ったんだよな。うちの親は兄貴には甘いからね。(僕とは違って。)でもね、兄貴は僕の予想通り、その半年後にはもうギターには手を出さなくなってたし、バンドの事なんか一言も言わないようになった。十万円するギターは押入れの中でね。・・・よくある事だよ。でさあ、それである日、僕は兄貴に聞いたんだよ。「兄貴、どうしてバンドなんてやろうと思ったの?」って。そしたらうちのぐうたら兄貴はさ、「ああ、それな。アニメでやってたからだよ」だってさ。それで兄貴はまた、自分の読んでいた漫画に目を落とした。・・・全く。兄貴に、統一的な方針がないってのは、そういうことさ。兄貴はいつも、瞬間瞬間の思いつきで生きてるからな。・・・ミーハーなんだよ。要するにね。・・・で、昨日なんて、兄貴は新しいオンラインゲーム買ってきて、「これにどっぷりつかるつもりだ」って僕に自慢してそのパッケージを見せてくるんだよね。だから僕は、「はいはい、そうですか」って流しておいた。兄貴は「これでランキングトップ百に入る」って言ってたけど、なんのランキングだかわからないね。僕には。
 まあ、うちの兄貴はそんなだけれどさ。うちの両親なんかも似たようなもんなんだよね。僕に言わせれば。だって、親なんてのはたいてい、現実主義者を自認している奴に限って、夢を見ているもんなんだ。・・・その話聞いて、ぐえって思ったんだけどさ、うちの親は僕の事を東京大学に行かせるか、それともプロスポーツ選手にするつもりだったんだって。・・・それで、僕をどこのスパルタ式なスポーツ塾だの、学習塾だのに通わせるか、熱心に二人で話していたらしい。ちなみに、兄貴が生まれた時には、そんな事は思いもつかなかったんだって。どうして、僕の時になってそんな事思いついちゃったんだろうね?。・・・全く。・・・でも僕は、そんなのに通わずに済んだ。そういう塾だの何だのの費用が余りにも高いから、うちには無理だという結論に達したらしい。・・・やれやれ、そんな所に通わさせられなくて、本当に良かった僕は思っているよ。そんなとこ行ってたら・・・・・ああ、考えただけでも、ブルっとするよ。
 まあ、そんな事はいいんだけどさ。・・・なんだか、僕は自分のおしゃべりばかりしてるな。・・・君は、僕がこうして喋っているのを聞くと、僕の事を学校でも家でもおしゃべりな奴だと思うんだろう?。・・・とんでもない!。事実は逆さ。僕はね、寡黙なんだよ。いや、本当に。物静かで、家でも学校でも通ってる。だってさ・・・しゃべりたい事なんて、ないしね。エグザイルだのAKBだの何とかレボリューションだの・・・・・僕は知ったこっちゃないんだよ!。知らないんだよ!・・・そんな事は。かといって、クラスの中の優等生連中に混ざりこんで、任天堂の株価とSONYの今期の純利益について話す気も起きない。・・・まあ、僕みたいな劣等生は彼らが何話してるか、全然知らないんだけどさ。
 そんな事はいいさ。君はさ・・・いや、僕の事。僕は僕の事を話そう。いや・・・僕だって、君の事は聞きたいんだよ。君の話をさ。でも、君は語る言葉を持たない。・・・いいんだよ、自分がどんなアーティストが好きかなんて、いや、もうジャニーズの話は聴きたくないし、流行語の口真似もうんざりなんだ。お笑い芸人?・・・よしてくれよ。・・・いやいや、君のどうしようもない彼氏がいかにイケメンかなんて話も聞きたくないんだ。今日、彼女にプロポーズしただって?・・・。何だって?・・・。中学から、十年付き合ってた彼女です、って?。・・・それはおめでとう。でも、今大切なのはその事じゃないんだ。
 君はどうして君を知らないんだ?。・・・なあ、僕だって、心ときめく瞬間というのはあるんだよ。本当にさ。それはどんな時か、言ってみようか?。それはね・・・駅で、一人の少女が電車を待っているとする。周りは皆通勤のサラリーマンや、学生たちの黒い群れさ。そしてその中でその少女はーーー彼女も学生のわけだがーーー、みんなと一緒に、同じような服で、おんなじ車両に乗り込む。そして、ドアが閉まる。・・・だが、その時、その子は何故か、とても悲しそうな顔をするんだな。・・・悲しい事なんか一つもないのに。それはまるで、そこに存在している事が悲しいであるかのような、そんな表情なんだよ。わかるかな?・・・僕の言いたい事。その時、僕はその子にときめく。恋をするわけだ。つまり。 
 馬鹿馬鹿しいって?。・・・笑うなよ。恥ずかしいじゃないか。・・・でも、まあ色々あるさ、人生だものね。なんでも、ソクラテスとかいう昔の賢人は、偉い人に「お前は死刑だ」と言われて、次のように言い返したって言うじゃないか。「それはそうですが、あなた達も自然によって死刑を宣告されているのです」。・・・全く、憎い奴だよね。これじゃあ、死刑になったってしょうがないってもんだ。
 余計な事を言っちゃったな。・・・まあ、いいさ。大体、僕って奴はいつも、こうでたらめな奴なんだ。本当に。世間の、世の中の規律という煮え湯をいつも飲まされて、それでとてもうんざりしちゃったんだね。・・・いや、僕もよくわからないけどさ。ところで、これはここだけの秘密だけど・・・君に一つ、とても大切な事を教えてあげよう。実はこの僕ーーーこの他でもない、一つの実在たる僕は、とあるうだつのあがらない作家志望のつまらない人間によって描かれた一人の人間だって事ーーーその事を僕は今、ここで君に告げてあげよう。こうしてね。・・・これはこれまで公然の秘密だったんだけど、僕はついここで口に出してしまった。・・・言っちゃいけないって、これを書いてる奴には言われたんだけどね。でもさ、我慢できなかったんだよ。でもさ、君はどう思う?。ここまで、こうしてくだらないおしゃべりをしてきた僕という存在が、実は紙の上だけの産物だなんて。・・・そんなの、誰が信じるだろう?。・・・いや、それは僕自身が信じなくちゃならないっていうのか?。・・・全く。
 全くね、今の世の中はおかしいぜ。ほんと言うとさ。みんな技術がどうの「上手い」だの「下手」だの言うけれど、その実、何も見ていちゃいない。これを書いている一人のうだつのあがらない男もさ(彼は僕の友人なんだけど)、言ってたよ。「僕は、文章がうまいなんて言われてもちっとも嬉しくはないよ。だって、皆最初から上から目線だからね。・・・そして、その割には自分は『平凡人だ』、なんて妙に謙虚なんだよ。別に、自分を天才だって勘違いしたっていいじゃないか」。・・・なんか、そんな事をごたごたと愚痴ってたよ。その『作家様』はさ。全く、こいつは嫌な人間だぜ。君も知ってるだろうけど。・・・でも、こいつの話はもうここらでやめよう。僕の方で、うんざりするしね。実を言うと、僕はこの産みの親である、このキーボード叩いている男の事が嫌いなのさ。ほんとの所。
 まあ、でも、雑談はここらでやめよう。・・・でもね、君に一つ言っておきたい事は、僕がたとえ、紙の上の存在にすぎないとしても、そしてくだらない一人の男に捏造された、そんな言葉だけの『人間』だとしても、やっぱり僕は僕だって事だ。これは・・・本当さ。みんなはね、現実というものに余りに重きを置きすぎているんだよ。現実が何だ?。君は、心置きなく話せる友人が一人でもいるか?。あるいは恋人が?・・・。フッ・・・嘘つけよ。君には一人も居ないね。それが、僕にはわかる。何故って?・・・。それは僕もそうだからさ。そして、人間というものが絶対そうであるように造られているからさ。だから、君はさ、また、僕と話したくなったら、ここにおいでよ。僕はここで待ってるから。この紙の上という媒体でね。
 ・・・さて、僕もそろそろ、自分の宿題を終わらせないとね。・・・全く、紙の上の存在にすぎないにもかかわらず、僕には生活もあれば、宿題もあるんだよ。・・・馬鹿馬鹿しい事だけどね。でも、本当さ。・・・それじゃあ、僕は今から、そちらの世界との通信を絶って、そして自分の作業に没頭する。・・・やらなきゃいけない事があるんだよ。こっちでもね。それじゃあ。アディオス。」


                               ※※※


 ・・・僕はその文章を一時間半ほどで書き終えると、ノートパソコンをぱたりと閉じた。そして、ふうっとため息をついた。僕は机の上のコーヒーをずずっとすすった。・・・机の上には、『本物の』明日の宿題が載っている。
 「やらなきゃいけないよな」
 と、僕はひとりでぼそっと呟いた。
 「僕は『こいつ』とは違って、フィクションじゃないわけだし」
 ・・・そして、僕は自分の文章を、ノートパソコンの『倉庫』というフォルダにしまいこむと、本当に自分の宿題に手をつけはじめた。そしてそれをやっている間、僕の頭に絶えず浮かんでいた事は、(ああ、僕が本当にフィクションの中での『僕』だったらな・・・)という事だった。しかし、事実は違った。僕はあくまでも現実の僕であり、そして目の前の宿題は、確かな質量を持った、本物の宿題だった。

寝る前の夢

                          

 

  テレビを見ていたら、ニュースキャスターがあまりにトンチンカンな発言をするので、僕は思わず、ぷっと吹き出して軽く笑ってしまった。だが、僕の両親はそれを見ながら、真剣そうにうなずいている。
 あほらしくなったので、僕は、親に「僕はもう寝るよ。明日、朝テストがあるから。」と言い残して、自分の部屋に戻った。実際は、そんなテストなんかないのだが。
 僕は自分の部屋に戻って、少し、頭を痛めて考えた。この世の事。宇宙の事。そしてーーーーーいや、何もない。何も起こらない。もしも、ああーーーーと、僕は考えた。六十年代とかのビートニクなら、ドラッグと酒と女の子で盛り上がったのかもしれないが、だが、今や多分、東京大学辺りでも、「六十年代ビートニクの初期衝動について」とか、なんとか、そんなインチキでアカデミックで天才的な講義とやらをやっていて、そこではメガネと黒髪の、真面目そうな連中がそのインチキ講義を聴いて、うんうんとうなずいているのかもしれない。ーーーーー「なるほど、ビートニクって、そういう連中か」なんてね。
 僕は窓を開けて、夜風が入ってくるままにした。ここから抜けだしてーーーーーああ、どっかのオペラでありそうだな。「ここから抜けだして、あなたの元へ行くのよーーー。夜風を切ってーーー。」ああ、馬鹿な妄想はやめよう。宿題をしよう。宿題を。
 宿題は次の歴史の授業で、僕が与えられた答えを答えるやつだ。何故、織田信長はあの時、ああしたのか、その理由を〇〇文字以内に答えよーーーーなんてやつだ。知らないよ。織田信長当人に聞いてくれ。・・・でも、多分、信長だって、答えられないだろうよ。「理由?ふん?。知るか。俺はただやるだけだ。そこをどけ」なんてね。
 また、くだらない妄想に走ってしまっているな。僕は。妄想ーーーーー妄想以外に何があるってんだ。僕らの青春は。全く・・・・うんざりするよ。ほんとうに、ほんとうにさ。ほんとうにうんざりする。
 ふと、今、思い出したけど、東京大学とか、そういうインテリ連中にとっては、世界はこんな風にわかれているらしく思われる。それは、動物園の檻の中の動物と、それを外で見ている観客との二種類に。で、インテリぶった連中はいつでも、観客気分で、死体解剖でもするみたいに、古今東西の名作を切り裂いて、理解したとかしないとかほざいている。・・・・全く。なんだってんだ。僕の腸をかっさばいて、その内臓のシステムを理解したところで、僕という人間を理解したという事になるのかね。全くの所。
 最近では、それはネットの連中もそうなんだがーーーーー奴らはいつでも、丘のような高い所から矢をぴゅんぴゅんと打って、それで当たれば大喜び。そうして、丘の下の僕ら駄目クズ共は永遠に、彼らの近場までよれないって事に相場が決まっているらしい。・・・・うんざりするよ。全く。
 ま、テレビとかもおんなじだけどね。褒めようが、涙を流そうが、どこまで行こうが、奴らーーー連中にとっては、全部、他人事なんだ。所詮は、隣の村の誰と誰ができたとか、できなかったとか、そんな噂話のものにすぎない。そうして、その噂話に狙いをつけてーーーーーいや、もう、やめよう。せいぜい、騒いでくれ。僕はうんざりしたんだ。全く。
 ・・・僕は、明かりを消した。宿題はもうとうに終わっていた。その宿題はーーー適当にでっちあげたもの。僕の無惨な解答。でも、一応は努力したんですよ、先生、ほうら、ここのこういう単語は、調べないとわからないじゃないですか?ほうら?・・・・的な解答だ。それは。・・・・まあ、それでいい。僕というのは、そういう存在なんだから。
 僕はベッドに寝転がった。僕は十年後、一体、どうなっているだろう?・・・あるいは、二十年後。僕は、ああ、この間、ウィキペディアで調べたニール・キャサディみたいに、メキシコの鉄道でひっくり返って死んでいる所を発見されるのだろうか?。それとも、ソクラテスのように死刑になるか、それともトルストイのように・・・・・おいおい、なんだって、そんな有名人の名前ばっかりだすんだ?・・・お前は平凡な、何者でもない人間じゃないか?・・・遠くで、そんな声がする。うるせえ。と、僕はそいつに答える。僕は僕だ。僕は、僕の中で有名なんだよ。僕一人の中ではな。
 ふと、起き上がって、窓を閉め、カーテンも締める。暗闇。静寂。・・・・あるいは、階下での小さな物音が聞こえる。母親が一人でテレビを見ているのかもしれない。父はもう明日に備えて寝ているはずだ。
 僕は目を瞑る。闇ーーーーーー闇から覚めても。・・・・全く寝ても、覚めても夢を見ているような気がするぜ。明日は、気になるあの子にアタックしてみようか?・・・・・・・ウソ、ウソだね。そんな子はいない。もう、うんざりなんだ。僕は学校では、ずっとひとりぼっちなんだから。心の中では。そりゃあ、友人はいる。ガールフレンドもいた事があるが・・・・・ああ、こんな話はやめよう。もう、うんざりなんだ。あんな仮面連中の話なんか、したくない。・・・・実は、僕は、結構いいとこのぼっちゃん的なところがあるんだぜ。で、学校の連中はみんな上品っちゃあ、上品なのかもしれないけど、それは、ただたんに仮面の被り方がちょっといかしているにすぎない。ニートであろうと、金持ちであろうと、王様であろうと、どこの誰であろうと、この世界で生きている限りは、仮面を被らなきゃいけない。あの不細工な仮面をさ。「おはようございまーーす。」「いってらっしゃいませーーー」。
 さよなら、僕はもう寝るよ。明日は学校に行かなくちゃならないんだ。そして、僕は新しい仮面を身に付ける。・・・・?君、見てな。僕はね、この仮面を年が経るにつれて、二重に三重にも膨れ上がらせていって、そして、最後には人々をだますほどの盛大な仮面を身につけて、そうやってどこぞのにお偉いさんになって、愛人を一杯連れて、いいクルマに乗って、大衆を馬鹿にしつつ、私腹をこやしてみせるから。そうなったら、面白いぜ。僕はーーーーーーーーそうなれるかもしれないな。全くの所。恥ずかしい話だけど。
 もう、寝なきゃ。明日は早いから。

雷火と共にサヨナラ

http://p.booklog.jp/book/69043/read

五時限の夢

 
 私は夢の中で眠っていました。・・・私は、夢の中で、机に突っ伏して、眠っていました。そして、夢の、そのまた夢の中で、私は恐ろしい夢を見ていました。私はそこでは暗い中を、どんどんと落下していくのです。・・・そして、その底には、人間の骨ばかりが沢山詰まっている・・・。骨は見えないけれど、何故だか、そう「感じた」のです。私は。
 私はどんどんどんどん深く落下していきました。私は怖いような、不安なような、それでいてどこかそれを愉しんでいる私もどこかで、落ちていく私を見ているような・・・そんな不安定な気持ちでした。私は、ただひたすらに落ちて行きました。
 そして、落ちる程に、底が見えて来ました。・・・それは私が思ったとおり、やっぱり、人間の骨で埋まっていました。ああ、私はあそこに落ちて、激突して死ぬんだ・・・私はそう感じました。それは、もう、間違いのない事実でした。
 ですが、地面が近づくにつれ、私は、妙な事に気が付きました。その、骨だらけの地底の真ん中に、何やら、赤いものが見えるのです。・・・それは、私が落下すればするほどに、どんどんと大きくなっていきました。はじめ、私はそれが、置いてある袋か何かだと思いましたが、段々に、それが生き物だという事に気が付きました。・・・それは、どんどん大きくなりました。私が落下するたびに。・・・それは、なんだか、その体が膨らんでいくようでもありました。
 私は落下していきました。そして、丁度私は、その赤い生き物に吸い込まれるように落ちていったのです・・・。そして、その赤い生き物が何なのか、私にもはっきりとわかってきました。・・・それは鬼でした。顔は馬みたいに細長いのに、体は筋骨隆々とした人の体、そして手には棍棒を持っていました。どうして、私がそんなにはっきりとその姿が見えたのか、それはわかりません。・・・本来、上からは、その全身が見えないはずでしたのに。
 私は、その赤い馬の化け物に吸い込まれてゆきました。そいつは、私に気がつくと、口をあんぐりと大きく開きました。・・すると、その口はみるみる、その地底一杯に広がりました。・・・そして、その口の中は真っ暗で、そして、何故だか、その真っ暗の口の奥には何人かの泣き叫ぶ赤ん坊の姿が見えました。・・・そして、その何人かの赤ん坊の姿は、互いにどろどろにくっついていて、そして、みんな何故だかもう、必死に、私の方に向かって泣き叫んでいるのです。
 私は、恐ろしくなりました。心底、怖かったのです。こんな事になるのなら、もっと早いいつかの時期に、死んでおけばよかったと思いました。・・・私は落下して行きました。その黒い口の中に。赤ん坊達の群れの中に、私の体は突入していきました。・・・そして、私が、ああ、もう駄目だ、と、心底諦めて、目を瞑った瞬間、ふいにどこからか光が現れ、強烈に私の目を焼きました。・・・そして、次の瞬間、私は目が覚めていました。
 それは、授業中の事でした。・・・私はいつもはしない居眠りを、昼休み後の英語の授業に、机に突っ伏して、眠ってしまっていたのでした。・・・そして、私の顔の辺りには、ちょうど、カーテンの隙間から漏れた光が、厳しく突き刺さっていました。・・・私は、内心の動揺と、私が今までぐうすか寝ていた事を周りに気取られないように(もちろん、周りの人達はみんな気がついていたでしょうが)、教科書をこれみよがしに広げて、その中に自分の顔を隠しました。・・・でも、私の心臓はバクバクと鳴っていました。私は、怖くてしかたなかったのです。・・・でも、それと同時に、私は、自分がこの、現実に帰ってきた事に安堵していました。私は、もう二度と、あんな夢は見たくなかった。だから、もう二度と、学校では居眠りしまいと、その英語の時間に、こっそりと誓いました。


 ・・・でも、事はそれで終わりじゃなかったのです。私はその日の帰り、いつも通り、友達のゆうちゃんと一緒に帰っていました。ゆうちゃんはおとなしくて、引っ込み思案な子でした。・・・だから、私とはいつも気が合うのでした。
 ・・・でも、その日の帰り、ゆうちゃんは私と一緒に帰りながら、少しだけ様子が変だったのを、私は覚えています。・・・ゆうちゃんは、一緒に帰りながら、私がいつものようなちょっとした世間話や、面白そうな話をしても、いつものように明るく優しく相槌を打ったりはしてくれませんでした。ゆうちゃんは珍しくーーーというか、私が一度も聞いた事がないくらいに、低い声で、私の話に「うん」「そうだね」と、答えるくらいなものでした。
 それを、私は最初は気が付きませんでしたけど、帰り道を十分ほど進んだ所で、その異変に気が付きました。・・・私は、彼女の事を思って、声をかけました。
 「ゆうちゃん、大丈夫?風邪でも引いているの?」
 ・・・すると、ゆうちゃんは、私の方とは逆の側を見て、ちょっとうつむきました。・・・そして、それっきり、何も答えようともしません。私が心配になって、もう一度、ゆうちゃんに声をかけようとすると、ゆうちゃんはまるで、私の言葉に覆いかぶさるように、次の言葉を言いました。
 「ねえ」
 それは、とても低い、男の人のような声だった事を覚えています。
 「私達はみんな、見てみぬフリをして、生きているのかしらねえ」
 ・・・それは、私にとっては意味不明な言葉でした。それに、普段のゆうちゃんからは考えられない口調と、言葉だったので、私はその時、呆然とそこに立ち尽くしました。ゆうちゃんは、また言葉を発しました。
 「あの赤ん坊達だって、きっと、とても苦しんでたのよ・・・。あなた、その事に気づいた・・・?」
 そう言って、ゆうちゃんは、ヌッと、私の方を見ました。私の方に、さっきまで見えなかった顔を向けました。・・・、私はその顔に驚きました。それは、まるで人間の顔ではありませんでした。でも、確かにゆうちゃんと分かる顔形も残っていたのです。つまり、それはゆうちゃんの顔から、もっと、別の薄気味悪い化け物の顔へと、ブクブクと音を立てながら、変わっていく途中だったのです。
 私は絶句しました。何も言えませんでした。逃げる事も、叫ぶ事もできませんでした。・・・その時、私は気が付かず、後で気がついた事でしたが、周りの光景がさっきまでと違っていました。確かに、そこは私達のいつもの帰路の途中だったのですが、その周囲には私達以外の人の姿は見当たらず、そして、ゆうちゃんの後ろの夕陽は、今まで見た事がないくらいに真っ赤になっていて、しかも、とても大きかったのです。それは、ゆうちゃんの顔よりずっと、大きく見えました。
 何も言えない私に、化け物になりつつあるゆうちゃんは、言葉を続けました。
 「私達は、何も見ずに生きている・・・。何も見ずに感じている・・・。でも、あなた、わかった・・・・・・・・?。落下の瞬間、とても怖かったでしょう?(そう言って、ゆうちゃんはニンマリと、赤黒く笑いました。)ここに戻ってこれた時、さぞ、ほっとしたでしょう?・・・。でもね、私達、忘れている。私達みんなが、落下し続けているという事に。」
 そう言い終えた時は、ゆうちゃんは、もう背丈二メートルくらいの、完全な化け物になっていました。・・・そして、その姿は、私が丁度、あの夢の中で見た、あの馬の顔をした化け物と全く同じだったのです!
 「あなた・・・わかっている?・・・私達は忘れているの。私達は、あの子どもたちの叫びを、忘れている。あの、底に埋まった沢山の骨も忘れて生きているの。私達が落下し続けて、生きている事も。そして、あの子供を、あの骨を作り上げたのが、私達自身だということも、私達は忘れているの。忘れたの。私達は全部。そう、忘れたのよ・・・だから、こうして」
 そう言って、ゆうちゃんーーーいいえ、もう、その鬼のような化け物は、どこから取り出してきたのか、あの長い棍棒を両手に持って、高く掲げていました。それで、私は今にも、打ちのめされ、死に絶えようとしているところでした。私の体は、ピクリとも動きませんでした。
 「全てを思い出させる為に、何もかも全て、私達がした事を、私達に全て、思い出させる為に、私はこうやって、みんなの所をまわって活動しているのよ。私達は、死に飢えているわ。自分達が、沢山の人を、いじめて、いためつけて、殺してきたのに、その事を忘れようとしているから、私はこうして、あなた達に、死というものを思い出させてあげるの。その為に、私のような化け物は存在しているの。・・・だから、まず、あなた。可愛いあなたから、殺してあげる。それで、たっぷりと、自分のした事を思い出して♥」
 ・・・その馬の化け物の最後の声は、変な事ですが、本当にチャーミングな声でした。可愛らしい口調でした。・・・もちろん、その時の、私は伽藍堂で、この世界も私自身も全てが空っぽになっていて、目の前の怪物が一体、何なのか、なぜ、私を殺そうとしているのか、全然わかりませんでしたが。
 ・・・私はまた、目をつむりました。今から死ぬのだ、とも、もう何とも思いませんでした。・・・ただ、反射的に目を閉じていました。ただ、私の魂の奥深い所では、死というものをはっきりと実感していました。言葉にならなくても、私はもうほとんど「死」に触れていました。
 そして、棍棒が振り下ろされてきました・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


                               ※
 私は目が覚めました。・・・今度こそ、本当に目が覚めたのです。・・・そこには、棍棒を持った馬の化け物の代わりに、教科書を持った、英語の先生が立って、私の顔をのぞきこんでいました。・・・先生は、その英語の教科書で、今にも私を小突こうとしているところでした。その刹那に、私は、はっと目を覚ましたというわけでした。
 「起きたか」
 と、先生は少し厳しめな声で言いました。
 「はい」
 と、私は放心状態で言いました。ここがどこだかさえ、ほとんどよくわからなかったぐらいでした。
 「珍しいな。お前が居眠りなんて。・・・これからは気をつけるように」
 ・・・そう言って、先生は教壇の方へ戻って行きました。周りのクラスメイトはみんな、くすくすと笑っていました。


 その日以来、私は、学校で居眠りした事はありません。




 少年の死

 少年が一人川の前に立っている。彼にはもう何もない。彼は絶望の淵に立たされている。彼は死のうとしている。
 (僕は死ぬのかな?)
 そう自問するがもう答えは決まっている。彼は川面を見つめる。次第にその川面は大きく強く彼の目の前に迫ってくる。
 (この川面が人生なのだ)
 彼はそんな風に考える。彼は川に飛び込む。その時、彼の目の前にはこれまで見たことのなかった景色が眼前する。彼がこれまで見た細かな風景の色とりどりがー小学生の頃(それは数年前のことだ)好きだった女の子や夏の日の鉄棒や何か細かなことで階段下で怒られたことなどーそうした景色が彼の前に一斉に眼前する。彼はそれ見る。そして川に落ちていった。

 彼の死体があがった頃、彼をいじめていた者共は口裏工作をしていじめを隠した。彼らはすべての証拠を隠滅した。学校側は「いじめの自殺は確認できない」と言った。こうして少年の日々は忘れられていった。彼が川面で見た奇蹟ーその映像の数々が彼の全てだった。おそらくは。
 僕は彼が書いた遺書を持っている。彼の自殺は「いじめ等の事実は確認されていない」事件として処理された。だから彼がいじめられたことを知っているのはこの世に僕と、いじめていた本人しか知りはしない。僕はこの事件の真相を公にするつもりはない。その理由はこの遺書の中にある。僕はその遺書をここに掲げておこう。

 「拝啓

 山田様

 あなたがこの文章を読んでいる頃には私はもうこの世にはいないでしょう。・・・なんて陳腐な文章ですね。映画なんかで良く出てくる。文学志望のあなたから見ればお笑い草でしょう。でも続けて聞いてください。お願いです。
 僕は死にます。どうしてかというと・・・死ぬのにも理由がいるのですね。面倒な世の中だ。僕は死にます。原因はいじめです。よくある理由ですね。全く陳腐だ・・・でも陳腐を恐れちゃいけないな、僕は死ぬんだから。
 僕がどんな手ひどいいじめを受けたかはあなたにはわからないでしょう。ことに女に痛めつけられるのは辛いものです。僕は女に痛めつけられていると本当に死にたくなります。まあ、死ぬんですが。
 やつらからどんなひどいいじめを受けたかは黙っておきましょう。まあ、あなただって想像はつくでしょう。文学志望なんだから。まあ、そういうことです。ところでこのことは親には黙って置いてください。世間にも見せないでください。僕は自分の死が冒涜されるのが一番嫌だから。
 僕にはあなたしか頼れる人はいません。自分の心を吐露できるのはあなたしかいません。おそらくあなたのような人がいるだけでも僕は幸福なのでしょう。数ある自殺者の中でも。それでもそれは自殺をくい止めるには足りませんでした。僕は弱い人間です。客観的にそう思います。だからこんな所で死ぬのだろうと思います。
 僕があなたと出会ったのは一年前、○×塾の中でしたね。あなたは先生で、僕は生徒でした。あなたはめんどくさそうに授業していて、僕はめんどくさそうに授業を受けていて、それで気が合ったのですね。僕はあなたに会った途端、ピンと来ましたよ。「僕と同じ奴がいる!」ってね。
 僕はあなたと仲良くなりました。あの頃には僕はもういじめられていたのですよ。そのことはあなたには言いませんでした。あなたは鈍いけど鋭敏な所があるから僕に何かが起こっているというのは承知していたのでしょうね。そんなある日に急に「おい、ドライブに行こう。連れてってやるよ」なんて言って僕を外に連れてってくれましたね。あのドライブはつまんなかったけど、僕もさすがにあなたには感謝しましたよ。「この人は分かってる」ってね。その頃、僕は付き合っている女の子がいたんですけどあなたとばかり遊んでいるものだからふられてしまいましたよ。あなたの方は彼女なんていやしないでしょうがね。
 嫌みはこのぐらいにしましょう。僕は死ぬんだから。でも僕は本当にあなたに感謝しているんですよ。本当です。あなたが何をしてくれたってわけでもないが、あなたがいてくれたおかげ随分助かったんです。死を止めるには至りませんでしたが。
 さてそろそろ僕は死にます。僕は死ぬ前にこれを郵便ポストに入れておきます。あなたに届く頃には僕は死んでいるでしょう。上手く死ねるといいですね。では。またあの世か来世であいましょう。

                     小林貴文    」


 僕はこの手紙を引き出しの一番奥に丁寧にハンカチで包んでしまっている。これでこの事件の事は誰にも知られない。僕はこれを外に出すつもりはない。ひとりの少年が死んだーそんなことは陳腐なことなのだ。彼が自分で言っていた通りに。
 僕は彼をいじめていた奴らがどんな奴らか知らない。だがおおよそそうした者共は社会を上手く切り抜けて生きていくだろう。彼のように自分を追い込むことを知らず最後の破局がやってくるまで邁進するだろう。
 僕は彼が死んでから半年後に大学をやめた。今はアルバイトをしながら小説を書いている。僕には書くことがもう分かっている。彼のことだ。彼の存在だ。僕は彼のことを忘れない。

このカテゴリーに該当する記事はありません。