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物と精神

詩・小説・批評・哲学など テーマは「世界と自分のあり方」全体です

   次の駅

この街では

何百万人もの人がいて

それぞれ違う考えと顔を持って

蠢いている

それなのに 皆

一緒に見えるのはどういうわけだろう?

・・・電車の中でふと

向かいの女の子と目が合った

あの子も僕を見て、おそらく

ああ、同じだ、と思った事だろう

僕は本を閉じて静かに立ち上がって

次の駅で降りた

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        君の死

雨の中を木の葉が散って

君の夏は終わった

君はもう死んでしまったのだ

いちか、あの日に、どこかで

君の死骸は墓地に埋葬され

もうこの世には残っていない

しかし

君の魂はそれによって取り戻される

なぜなら

君は生きている時は魂を持っていなかったから

自然は慈悲深い 君は

死んで「生」を得る

          君の罰

誰かが失った物を

君は嬉しそうに眺める

それが君の悦びの全てだ

たしかに君は何も失っちゃいない

君は失うことすら禁じられているのだ

つまり君は所有せざる者

君は失う事を怖れて

初めから全てを捨ててしまったのだ

そうして永遠に虚空の宇宙を彷徨う・・・

それが君が君自身に与えた

最後の「罰」だ

 
          私とあなた

あなたのお名前を

お聞かせ下さい

あなたの御心を

私に見せて下さい

あなたの素顔を

私に晒して下さい

あなた自身を

私に預けて下さい

私があなたを救ってあげましょう

あなたと同化する事で

あなたがあなたになる事で

私が私になる事で

      詩人へ        月の恋人

     詩人へ

静かな言葉のように

沈黙のように君が降り立つ時

一つの花が開く

世界は灰色だ

それを色付けるのは君

いつでも世界は言葉を待って

君を美しく輝かせてくれる


        月の恋人

白く薄い光の中に

現代人の生活が・・・ある

みな、仮装をしてきらびやかだが

その胸には寒い思いを抱えて

そうして何か言われるたびに怒り出し

隣人の靴を踏みつけることを癖とする

・・・何とかバレないように犯罪を犯したいと

考える者達が正義を叫び

街頭はスローガンで一杯となる

今、夜は無色透明で

世界は明日、終わりそうだと

預言者たちが言う中 僕はふと

昔の恋人の面影を

あの月の相貌の中に見た

             固持

窓の外には

「世界」が控えている

お前は孤独を楽しんでいる

この世はがらんどうのようだ

いつか世界がお前に微笑みかける時があったら

お前は満面の笑みを返してやれ・・・

それまでは冷笑と侮蔑の中で忍従し

お前自身を固持し続けよ



          一艘の船

世界が美しい花のように開く時

人々は皆沈黙している

言葉がそれを讃え 音楽がそれを表す時

人の耳と目は沈黙している

君は

空が降ってきたかのように

目と耳を塞ぎ

「ああ、明日がない!」と叫び出す

僕は

世界を救出するために

一艘の船を繰り出す

   猫の瞳

ストーブの前で暖まる猫と一緒に

冷えた体を暖めて

「ああ、学校行きたくないな・・・」と思ったことがある

世の中にはサラリーマン・学生と

どうして「通勤者」で一杯なのだろう?と

思ったことがある

そんな僕も「やれやれ」と腰を上げて

今日もお定まりの学校に行く

全ては遠い昔のようだ

猫の瞳だけが青く輝いている

    学級委員長

朝がやって来て

僕を夜へと誘う

「止めろよ。僕はもっと眠っていたいんだ」

「この世に起きたくはないんだ」

・・・朝は強引に僕の布団を引剥がして

それをどこかへと持って行ってしまう

僕は寝ぼけ眼のまま

神に祈り、朝を呪った

・・・朝、いつもの学校に登校すると

学級委員長の髪が

おさげになっているのに気がついた

一編の詩

土曜の夜に

雨が降る・・・

それは君らの預かり知らぬ土曜の夜だ・・・

サラリーマンも浮浪者も一人もいない

僕の中の心の夜・・・

その中では雨が降り

一人の少女がシクシクと泣いているのだ・・・

シクシクと、いつまでも、いつまでも、しつこく・・・

僕の心の中で少女が泣いていようと

君たちの耳には届かない

だからたまにこの言葉を翻訳してみせると

残念ながら一編の詩となる訳だ

   告げる声

夕暮れが走り

象達が戯れ

俺の死体は2~3年も

放置されたまま

神々の遊びに憂き身を費やし

"二世"も驚くたまもの

この肉体には不死が宿り

常に永遠を追い求める

"彼の地"こそが本当なのだ、と

誰かの告げる声が俺には聞こえる

   賭け

肉声はほのかに暖かく

人々の叫声はいつも

心ないものに聞こえるごとく

神が調整をしてくれる・・・

左手の震えを止めるために飲んだ酒は

俺の中で永遠に凍ったままだ

それでも人は人を暖めるために

永遠に街頭を彷徨うというのか・・・

今日も娼婦達は明日を占うために

お前達の死を神に賭けた


   天使の足跡

天使の足跡に

お前は耳を傾ける

俺はいつも死体の臭いを嗅ぎ

しかめっ面するのを得意とする

いつの間にか、お前は裸足だ・・・

この世の全てが初めから古代であったように

俺の魂は既に失われ

お前の元にひざまずく

お前は天使の足跡に耳を傾け

俺の方を見ようともしない

    神の冠

凍った透明な霧雨群に

開け放たれた野良達がついていく・・・

俺のすぐ後ろを通る軍隊達は

今見知ったばかりの奴らのようだ・・・

神は皇后を讃えるために地上に赴き

その白い額に冠をこしらえた

皇后は笑いをこらえるためにガムを噛みながら

明日のテレビ欄を想起していたのだが・・・

俺はもうすぐ二十歳の暮れ・・・

夕闇はゆっくりと降りてくる 地上に

神の冠をかたどったままに

   涙の価値

涙の価値は

心に打たれた楔の雨か?

涙の価値は

人の言葉に耳を傾け

それを吐き出す術か?

涙の価値は

言葉によって尊くされた物を

さらに尊くするために

しおらしく流す涙の事だろうか?

それとも涙の価値は

僕自身が流している

この涙の事だろうか?

涙の価値は

大勢の人前で流す

そうした涙の事だろうか?

それとも涙の価値は

お前自身が流す

俺への愛だろうか?



    神の髪

静かに天界は蠢く

・・・夜は青春を待っている

心は開け放たれた扉

今、左手の扇によって

俺の右手が団扇になる・・・

壇上では先生がいつもの挨拶

俺は俺になるために

神の髪をひきちぎった所だ

   真実の塔

繊細という名の

プラスチック爆弾

言葉が揺曳する中、俺は

「左」を確かに失った

ハンターハンターのゴンが右手パンチ?

「それ」は未だ諧謔の極みと

評論家連中がニヤニヤする中 俺は

ゴンさんと愛の塔を目指して切磋琢磨・・・

「左」をはっきりと失った俺の最中に

真実の塔が降りかかるのも振り返らずに・・・

   虹

森の中を一匹の孤独なスイミー達が

泳いでいく

「左」は失われたものの象徴

「俺」は壊れたかめ壷を象徴するに・・・足る

光速はいつも無限より彼方で

器楽器は

お前たちの虹彩の彼方に虹を見ていた

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